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《内部資料入手》都立ゴルフ場「若洲リンクス」江東区長・東京都議親子の“私物化”疑惑

《内部資料入手》都立ゴルフ場「若洲リンクス」江東区長・東京都議親子の“私物化”疑惑

2023/03/23

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース, 社会, 政治

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「オープン当初は悪臭もしたし、芝の下からはメタンガスが吹き出たものです。『禁煙・ライター使用禁止』なんて看板が立っていました。現在はガスを自然に抜く管を設置してあるので感じませんが、グリーンを直す工事をやって掘り返すと、やはり耐えがたい臭いがします」(同前)

 若洲GLの公式サイトによれば、平日は10組、土日祝日は6組までコンペ予約が可能だ。予約は「コンペ開催予定月2ヶ月前の1日の午前10時より、予約専用電話で先着順に予定組数に達するまで受付いたします」。またコンペではなく、4人1組でのプレーなら「プレー日一ヶ月前の同日(プレー日と同じ日、同じ日がない場合は末日)の正午から24:00まで、1組ずつ先着順に予定組数に達するまでご予約を承ります」。プレーであれば、予約専用電話またはオンライン予約が可能だ。

 3月中旬、筆者もネット予約を試みた。時報が正午を打った瞬間、予約対象日が出ると同時に、「しばらく待ってから再度アクセスしてください」の案内文が出た。クリック可能なリンクが出てくることは一度もないまま、「予約受付は終了しました」の表示に切り替わった。コンマ何秒間に勝負は終わっているようなのだ。

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 若洲GLを愛好する40代の男性は「希望しても年に1度も予約できない人がほとんどですよ」と口を尖らせた。

「あの親子」だけは使っていたんです

「実際、過去には、議員の立場を使って予約を取っていた都議は少なからずいました。都議会自民党の人たちですね。が、小池都政がスタートするにあたって襟を正すようになった。というより、取れなくなったんです。自民党に通じていると睨まれたら自分の身が危ないと感じた都の職員が『別枠予約』の手配を控えるようになって、都議側も『不便になったな』と言いつつ受け入れていました。ただ、『あの親子』だけは現在でも同じように使っていたんです。都議会自民党の人は皆、なんとなく知っていたのではないか」(都議会自民党に詳しい都庁関係者)

 関係者が「あの親子」と名指しするのは、現在4期目の江東区長、山﨑孝明氏(79)と、その息子、江東区選出の都議会議員、山﨑一輝氏(50)だ。

 自身のホームページなどによると、孝明氏は砂町の出身。早稲田大学を卒業したのち、そば店経営や衆議院議員秘書を経て83年に江東区議に当選して2期、都議を5期務めた後、2007年から江東区長に。3年前からは特別区長会会長にも選ばれた。昨秋、今年4月の区長選に5選を目指し出馬することを表明したが、有力な対抗馬は、元自民党衆議院議員の木村弥生氏だ。

 都議時代、「都議会のドン」こと内田茂氏(昨年12月に死去)に近づいて頭角を現した孝明氏は、4期目で都議会自民党幹事長を任されたが、都政ではそこまで。

「五輪招致議連の旗を振るなど石原知事に頼りにされた反面、議長や都連幹部への道は開かれず、区政に活路を見出したようです」(当時の都庁担当記者)

 今回の区長選(4月23日投開票)でも、告示5日前の4月11日には、若洲GLを会場に「第2回山﨑会長杯」が予定されている。

 主催するのは、孝明区長が会長を務める江東区ゴルフ連盟である。

山﨑孝明氏 ©時事通信社

 息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。

 父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。

山﨑一輝氏 ©時事通信社

「ゴルフはちゃんとやっていない」

 この山﨑親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。

 ――メモの利用実績は事実ですか。

 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」

 ――かなり頻繁に利用されているのでは?

 一輝都議「利用実績は全く違います」

 ――何回されているんですか。

 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」

 ――それはプレーした回数ですね。

 一輝都議「もちろんそうです」

 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。

 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」

 ――膀胱がんを患われた。

 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」

 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。

「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山﨑会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」

 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。

ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

《内部資料入手》都立ゴルフ場「若洲リンクス」江東区長・東京都議親子の“私物化”疑惑

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