「何年も前から、どこかで昆虫食は炎上するだろうと身構えてきました」
コオロギ食への批判が急激に増えた騒動を受け、食用昆虫科学研究会の理事長・佐伯真二郎氏はこう語る。
佐伯氏は長年昆虫食に携わってきた間、昆虫食が広まるにつれ何かしらの炎上が起こるならば、そのきっかけは「アレルギーをはじめとした何らかの食品事故」だと想像していたという。
「例えば昆虫食初心者に、アレルギーが起こりうることを事前に説明しない。イベントや動画配信で昆虫の生食パフォーマンスをする。罰ゲームや騙し討ちに使う。要は提供者の不手際や、目立ちたがり屋が調子に乗ることで、食中毒やアレルギーなどの食品事故が起こるだろうと。そして世間がそれ見たことかと、提供者と食べた人を『自業自得』と責めるだろう。そう予想していました。
だからせめて私が参加する昆虫食イベントでは、誤解による食品リスクを最小限にするため、説明の上で同意書を書いてもらってから提供するなど、万が一の事故や炎上が起こった時の備えをしてきました」
「コオロギ食」大炎上のきっかけ
ところが今のコオロギ騒ぎは、予想外のところからやって来た。騒動が広まった大きなきっかけである高校生による実習を見てみると、加熱済みの養殖昆虫が企業から提供され、説明した上で味見してレシピを生徒自身が作成し、その料理を食べることを選んだ人たちが食べたという出来事だ。そして、その詳細が省略され伝わったことから「子どもたちに半強制的に食べさせた」と誤解され、炎上。
「なんの事故も起こっていない、被害者不在の出来事です。その一方でネット上では食べたくない人たちが想像の重ねがけでネガティブなコオロギ像を膨らませ、もともとあった陰謀論なども混ざり合い、私が昆虫食の研究をしてきた15年間で一度も聞いたことのない謎ワードが飛び交う、ちょっと異なる様相になってきました」
給食は単なる誤解だったが、奇想天外と思える言説はこのあたりか。
広く浅く広まった反コオロギの声
「コオロギを食べると酸化グラフェンが生成され、人間の身体がデバイスとなり電池になる」
「欧州全域で、虫の添加物を加えることが決定」