大好きな野球をやりたい。それだけがモチベーションだった。野球に一途な高校生は、甲子園の地区予選で負けたあと、一日だけ休んで、勉強に集中した。半年間のブランクで、東大に現役合格。「東大は弱い」という固定観念を打破すべく、松岡泰希はキャプテンとして、必死に戦った。それでも、何かが足りなかった。今シーズンからは、さらに高いレベルへ――。明治安田生命で、社会人野球に挑む。

 ここでは『東大野球部には「野球脳」がない。 最下位チームの新・戦略論!』(文藝春秋)を一部抜粋して紹介。2022年度のキャプテンが語る「東大野球部に足りないもの」とは――。(全2回の1回目/続きを読む

松岡泰希(撮影:藤田孝夫)

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野球を始めたきっかけ

――まずは松岡さんの野球との出会いについて。『僕の野球人生』のエッセイに、アニメの『メジャー』が好きだったと書いていますね。

松岡 はい。小学校に入ったばかりでした。茂野吾郎、あのころは本田吾郎でしたけど、面白そうだなって見ているうちに、本気で野球に取り組んでいる吾郎の熱さに魅了されたんですね。

 吾郎のマネをして、放課後に雲梯にぶらさがったり、友だちと公園で野球をしては、勝った負けたとケンカしていました。週末には父親とキャッチボールや試合をやって、そこでも負けるとすねちゃって(笑)。

――マンガやアニメにのめりこむって、『巨人の星』みたいに、昔はよくあったと思います。最近では珍しいじゃないですか。上の世代の感覚に近いけど、感性がマセていたのかな。

松岡 いや、逆じゃないですか。マセていたら、そういうふうになんないでしょって思うんじゃないでしょうか。

――『メジャー』って、ヒーロー的っていうか、東大野球とはちょっと違うかなって思うんですけど。