いままでに「プロ野球選手」になったのは、明治148人、東大6人。昨シーズンの「甲子園出場者数」は、明治44人、東大2人。東大野球部の選手たちは、「20倍」以上の実力差を埋めるべく、死に物狂いの努力を続けている。2年前の春の法政戦、ついに東大は、六大学リーグ戦の連敗を64で止めた。
ここでは『東大野球部には「野球脳」がない。 最下位チームの新・戦略論!』(文藝春秋)を一部抜粋して紹介。チームNo.1スラッガー・宮﨑湧(現・日本通運)が、東大の「データ革命」を証言する。(全2回の2回目/最初から読む)
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「正直、あの試合はまぐれです」
――3年生でレギュラーになって、2021年5月23日。法政戦での勝利は「一生忘れることはない」と『僕の野球人生』に書いていました。「喜びを超えて興奮のあまり全身に鳥肌が立って、自然と涙が溢れていました」と……。コロナで完全な形での再開ではないにせよ、勝てたっていうのは、やっぱり大きいですよね。
宮﨑 それまで未勝利だったんで、本当に可能性がないんじゃないかなって思っていたんですよ。野球って本来、番狂わせが起こりやすいスポーツなのに、こんなに勝てないってことは無理だろうって……。
法政に勝つ前の土曜日の試合と、その前の立教の2試合は、どっちも中盤ぐらいまでリードしていたんです。ひっくり返されて、結局、ボロボロの大差になっちゃう。そうなるんだろうなと僕は思っていたんですよ。勝ったことないから。
――宮﨑さんぐらい前向きでも、そうなるんですか。
宮﨑 僕は本来、ネガティヴなんで、リスクとか、失敗したらどうしようとか、考えてしまう人間なんです。だから、勝てない。仮にリードしていても、その状況に自分たちがあたふたして、変なミスをして追いつかれて、勝ち越されて負けるみたいな(笑)。これはたぶん変わんないだろうなと思っていたら、勝てちゃったんですね。正直、あの試合はまぐれです。
法政もなかなかお粗末なバッティングだったんですけど、それでも勝てる可能性があるってことは、革命というか、自分たちもできるんだって思いました。そこから夏のオープン戦で、かなり劣勢でも、なんとか終盤に追いついて逆転勝ちしたり、雰囲気は変わりましたね。僕が3年生でレギュラー取れるようになったときは負け続けて、バスに乗るのも嫌だったっていうか……。