寺門ジモン「リングじゃ負けるが山では勝つ」
岡宗 僕、『藝人春秋2』の下巻に入っている寺門ジモンさん(ダチョウ倶楽部)のお話が大好きなんですけど。ハカセは、もう長くジモンさんウォッチングをされてますもんね。
博士 してます。長いですよー(笑)。
岡宗 ハカセは最初から気づいてたんですか? ジモンさんの異形ぶりというか……。
博士 気づいたのは2001年だったかな、テレ朝の『虎ノ門』という番組で、「芸能界一ケンカが強いのは誰か!?」っていうのを決めるって企画で集まった時に、ジモンさんが楽屋で突然「俺が一番強いに決まってるだろ!」って話をしだして。
岡宗 えっ?
博士 「歴史上で俺の境地に達しているのは、大山倍達、宮本武蔵、ヒクソン・グレイシーしかいない」って言ったんですよ。でもジモンさんは、「たしかに俺はリングの上じゃ負けるよ」と。「だけど山の中に入ったら俺のほうがヒクソンより強い」って話ですから。
岡宗 「一緒に山に入ってどっちが出てくるかという話であれば、ヒクソンじゃなくて俺だ」って主張なんですよね。
博士 ダチョウ倶楽部が3人でやる、「オォーオッ、オイーーッ!!!」っていうあのツッコミ、気になりますよね。ハーモナイズできてない。
岡宗 はいはいはい(笑)。
博士 ひとりジモンさんだけめっちゃ声が大きいじゃないですか。あれはライオンの咆哮なんです。山奥で「ガッガガガルルーー」ってデスメタル的な声を出す練習をして、ライオンと同じく他の動物をひれ伏させる、百獣の王の雄叫びが出せるようになったっていうんです。
岡宗 確かに極真カラテの「コーーーッ!」っていう息吹みたいな感じもしますね。『藝人春秋2』に、武井壮さんと寺門ジモンさんが雑誌で対談して、「史上最強の男はどっちだ?」って話になったって話もありますよね。
博士 そう。で、ジモンさんが対談前から「武井くん? 彼は死ぬよ」って言ってて。「殺す」宣言ですよ(笑)。本人にも「お前は死ぬ」って何度も言うんですよ。さらに最終的には、「俺、人じゃないんだよ。俺の意識は神レベルだからね」と、神宣言が出ましたから。
岡宗 もうマジなんですね。
博士 本気ですね。ジモンさんは肉体管理にものすごくうるさいんですよ。お酒は飲まないし、四六時中、謎の液体を飲んでるんですよ。
岡宗 謎の液体……。何色ですか?
博士 緑。自分で作ってる青汁だから。
岡宗 オリジナル青汁(笑)。それを毎日のように飲まれてる。まぁ芸能界は変わった人が多いとは聞きますけど、かなりの方ですよね(笑)。
http://bunshun.jp/articles/-/6293
http://bunshun.jp/articles/-/6298
博士の21年間が松居一代にたった1日で追い越された日
岡宗 今、ハカセがウォッチングされてる対象の方は何人くらいいらっしゃるんですか?
博士 かなりいますね。だって連載してるのが「週刊文春」ですから、その時起こった時事ネタ、事件に合わせて対象の人物を選んで書いているので。単行本になると、いかにボクが時事を捉えているかが見えてこないのが、すごく残念なんですけど。
岡宗 ハカセは子供の頃から日記を書かれてましたよね?
博士 うん。もうめちゃくちゃきれいな字で書いてましたよ。
岡宗 拝見したことあります。楷書で書いてましたからね。しかも文章が長い。
博士 そう。でも芸人になる時に、「こんなに真面目では芸人になれない」って思いこんで、浅草のフランス座で、汚い字を書く練習をしたんです。
岡宗 ちょっときれいすぎると。
博士 それで「俺は毎日日記書くから赤江くん(相方・玉袋筋太郎の本名)も文章書かなきゃいけないよ」って。で、玉袋が書いた日記を俺が読んで確認してました。5歳俺が年上だから、そういう関係だったんでしょうね。そしたらノートにね、フランス座の岡山社長の金沢弁の口調で「きょう、れんしゅうしたってよぉー」って、全部ひらがなで書いてある。しかも最初の数ページ目、日記の途中から文字が血染めになるんですよ。当時、赤江くんは爪とか指を噛む癖があったんですね。で、血が出たからそれで書いたと。
岡宗 えーっ。
博士 うわっ、この人、今まで会ったことがない本当の原始人だって驚いた。今、玉袋はすごく端正な、きれいな文体の文章を書きますけど、僕からすると最初の驚きがすごいんです。『アルジャーノンに花束を』というか、ホモサピエンスが初めてネアンデルタールを見たような(笑)。
岡宗 ハカセが日記のブログを始められたのはいつですか?
博士 97年からやってます。今2018年だから21年間、1日も欠かさず書いています。21年間で約7500日以上書いているのに、その俺のブログの総ヒット数が松居一代の1日分に負けるんですよ。
岡宗 すごいですね、あの方(笑)。
博士 というより、どんだけ俺が世の中の主流にいないかっていう。ボクが、いかに、この世界の片隅で生きているかの証明です(笑)。でもブログを始める前から、僕は日記を書いていない日の方が少ないんです。先生との文通から始まって、小4ぐらいから書いていますから。「たけしさんの元へ行ったら自分の道が開けるはずだ」って思い始めてから、自分との自問自答を日記につけるということをやり始めて。その手書きの日記をパソコンで打ち直して、今度「藝人青春 Diary、1986年の水道橋博士」っていう連載をやろうとしてるんです。
岡宗 書く量がすごいですね。普段に芸人のお仕事をされながら、じゃないですか。
博士 だから睡眠時間がない。自分の今の人生に向かい合うプラス、自分の過去に向かい合うわけですから。 好奇心と想い出に節度がない。大滝詠一さんもそこにこだわっていくうちに、自分の音楽的な新作がでなくなるサイクルになっていましたよね。