1ページ目から読む
4/4ページ目

 2020年のドラマ『テセウスの船』では、冤罪により死刑囚となった元警官を演じたが、昨年放送のドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』では、同じく冤罪事件をモチーフにしながらも、鈴木はむしろそれを隠蔽する側に回る政治記者を演じ、改めてその演技の振り幅を実感させた。この4月には、2021年に実直な救急救命医を演じて好評を博した連続ドラマの劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』が公開予定で、それに先立ってスペシャルドラマの放送も控える。

 さらに目下、Netflixで来年にも全世界に配信予定の映画『シティーハンター』の撮影中だ。言わずと知れた人気マンガの映画化だが、その主人公・冴羽獠に、鈴木は小学校高学年で出会って以来、彼のような男になりたいと思い続けてきた。今回、その憧れの人をついに演じることになったと同時に、デビュー以来海外進出を夢見てきた彼からすると、世界配信されることはその足がかりにもなりそうである。

「40歳はキャリアという面で折り返し」

©文藝春秋

 もっとも、彼がかつて語ったところでは、役者という仕事はずっと何かを追い続ける仕事であり、死ぬまで何かにたどり着くことはないと思っているという。《むしろ自分を壊して、イチから作る作業をやり続けることが大事だな、と。死ぬ時自分に、「ちゃんとやり続けてこられたな」と言えるような役者でありたいですね》とは、32歳のときの発言だ(『婦人公論』2015年11月10日号)。

ADVERTISEMENT

 最近のインタビューでは、《40歳はキャリアという面で折り返し》と位置づけ、《自分の人生が終わるときに何が残せるのか、逆算して考えることがコロナ禍以降に増えた気がします。これからはひとつひとつの作品が勝負。自分の人生の集大成だと思って失敗を恐れず、いろんなチャレンジをしていきたいです》と抱負を述べているが(「週刊女性PRIME」2023年1月30日配信)、役づくりのためひたむきに作業していくことに変わりはあるまい。今後も俳優・鈴木亮平は、清濁、善悪、美醜あらゆるものを表現しながら、さまざまな人間の姿を見せ続けてくれることだろう。