久保田 ただ、調査されることは候補者の方にとってデメリットばかりではないんですよ。私達の仕事は候補者の問題点を見つけることではなくて、候補者がこれまでどう生きてきた人物なのかを調べることです。なので、調査する中でその人の収めた“実績”が出てきた場合も企業に報告しています。
華麗な経歴でもSNSには書かない「Z世代のナゾ」
――履歴書の内容を裏付けてあげるということですか?
久保田 そういう場合もありますし、履歴書に書かれていないこともありますね。学生時代にスポーツや学業で優秀な成績を収めていたり、ボランティア活動に取り組んでいたり……。第三者から見ればアピールポイントになりそうな経歴でも、なぜか履歴書に書いていない人が結構いるんです。そういう候補者にとっては、むしろ調査が有利に働く場合もあると思います。
――自分の強みを就活でアピールしない人なんていないのでは……。
久保田 それが意外に多くて、履歴書どころか、面接でも話していない人もいます。スポーツの強豪校でキャプテンをやっていたとか、弁論大会で優勝していたとか、びっくりするような華麗な経歴が調査で判明することもありました。
特にZ世代は、自慢だと周囲に思われるのが怖くてSNSにも書いていなかったりする。世代の特徴のひとつでもある気がします。
SNSこそ“本当の履歴書”なのかもしれない
――「企業調査センター」では、個人向けに“裏アカ”を特定する「恋トク」というサービスも提供していますよね。こちらはどんな依頼が多いですか。
久保田 企業よりももっと様々な要望がありますね。付き合っている恋人が浮気をしていないか不安だから“裏アカ”を知りたいという方から、片思いの相手と仲良くなるためにアカウントを調べてほしいという方、自分を誹謗中傷してきているアカウントの“本アカ”を調べてほしい方など、ひとつひとつの依頼で何を希望されているのかがまったく違います。
――「恋トク」という名前ですが、内容は恋愛だけではないんですね。
久保田 知り合いだけではなく、有名人のアカウントを知りたいという方も時々いますね。風俗で働いている女性の方から、自分をよく指名してくれるお笑い芸人さんの“裏アカ”を調べてほしいという依頼があったこともあります。
――企業からも個人からも求められているところに、時代のニーズを感じます。
久保田 履歴書だけでは見えてこない候補者の姿があるように、人間関係でも表面上の付き合いだけでは分からない部分があります。表では言えない本音を発信できたり、個人のリテラシーが試される分、SNSの方が“本当の履歴書”“と言えるかもしれません。
SNSも含めたバックグラウンドチェックは欧米での採用活動ではすでに一般的なものとなっていますし、個人向けのサービスも含め、これからますます依頼は増えてくると思います。