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ドラマを支えた福原遥の「控えめ力」

 新たなヒロイン像・舞を半年間、演じきった福原遥は、子供時代、「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」(09年〜13年)の主人公を演じて人気を博し、いつかは朝ドラのヒロインになりたいと夢見ていたことが今回かなったというシンデレラストーリーを作り上げた。

「クッキングアイドル アイ!マイ!まいん!」の“まいんちゃん”として活躍 NHK公式HPより

 だが、成人以降は、脇で光る仕事も多く、とりわけ「正直不動産」(22年 NHK総合)の個性的な主人公(山下智久)に振り回される後輩社員役は高評価を得ていた。どちらかというと人に寄り添い、適切なリアクションをとったりフォローしたりする役割で力を発揮する。やさしさやかわいげを振りまき、忠実な印象をもたらす役が似合うという特性を、朝ドラヒロインにうまく生かしたといえるだろう。舞は結果的にやりたいことを叶えているとはいえ、福原遥の控えめな雰囲気が、がむしゃら感を薄めた。

 だからなのか、夫で歌人の貴司や、大学の先輩で空飛ぶクルマ開発に賭ける刈谷の生き方に光が当たり、ときに彼らが物語の主人公のようにも見えるほどだった。また、兄・悠人と結ばれた幼馴染の久留美(山下美月)は、父・佳晴(松尾諭)が長年定職につかなくても寛容な態度で接し、看護師として地道にキャリアアップをし、素直じゃない悠人ともうまくつきあってきた彼女のほうが従来の苦労人タイプのヒロインのようにも見えた。

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福原遥さん

 みんなを主人公のように見せる舞の控えめ力。ドラマのナレーションを担当しているさだまさし(ばらもん凧の設定)に「主人公」という歌があり、自分の人生では誰もが主人公という歌詞があるが、まさに舞のやさしくおだやかなまなざしが、ドラマの誰もをみな主人公にしていた。そして、そんな舞を、君こそ主人公だよ、とそっと支え続けた人物が貴司であったというなんとも素敵な未来のおとぎ話であった。