東京女子医科大学が研究費などの税務申告をめぐり、東京国税局からおよそ2億5000万円の申告漏れを指摘されていたことがわかった。追徴課税額は過少申告加算税を含め、およそ5500万円とみられている。
文春オンラインでは、これまで女子医大をめぐる“疑惑のカネ”について報じてきた。また、昨年7月には、東京国税局の“最強部隊”といわれる課税第二部資料調査課「通称:リョウチョウ」が女子医大の税務調査に着手したこともスクープしていた。
今回の追徴課税はリョウチョウの調査の末に行われたものと見られるが、果たして、女子医大が抱える闇とはどれほど深いのか。「実質的な強制調査」と言われるリョウチョウの調査の実態について詳報した当時の記事を再公開する。(初出・2022年8月2日、年齢、肩書は当時のママ)
◆◆◆
文春オンラインで報じた、東京女子医科大学の岩本絹子理事長をめぐる「疑惑のカネ」が、急展開をみせている。(東京女子医大の闇 #1 #2 #3)
東京国税局の"最強部隊"といわれる課税第二部資料調査課「通称:リョウチョウ」が、この報道の翌日に女子医大の税務調査に着手したのだ。
疑惑追及キャンペーン第4弾では、知られざるリョウチョウの実像と調査のポイントについて、東京国税局OBの佐藤弘幸税理士の全面協力を得て、徹底検証する。
エリート集団「泣く子も黙るリョウチョウ」
学校法人・東京女子医科大学の河田町キャンパス(東京・新宿区)の中心には、「女子医大通り」が貫くように通っている。その両側には、赤レンガ色の校舎などが立ち並ぶ。岩本絹子理事長の肝煎りで莫大な資金が投入され、次々と建て替えが進められているのだ。建物が赤レンガ色で統一されているせいか、女子医大を「赤い巨塔」と呼ぶ人もいる。
一方、重厚な施設と対照的なのが、河田町キャンパスの端にある「巴女子学生会館」だ。プレハブのように簡素な3階建ての建物で、数年前まで理事長室や経理課が置かれていた。
2020年、岩本理事長は理事長室等を、新築した「彌生記念教育棟」に約6億円の追加費用をかけて移転させたが、これには職員から批判の声が上がった。
7月20日午前9時半過ぎ、この「巴女子学生会館」に、黒いバッグを手にした1人の中年の男性が入った。しばらくして、また1人続く。同じ雰囲気の男たち5人が、時間をずらして次々と建物の中に入っていった。
この日から、東京国税局の課税第二部(法人担当)資料調査課が、女子医大の税務調査に着手したのだ。税理士や公認会計士たちは、彼らをこう呼ぶ。「泣く子も黙るリョウチョウ」。
「リョウチョウ」とは、資料調査課を指す隠語で、「コメ」、「リョウ」と呼ばれることもある。調査を担当するのは、実査官(実務指導担当調査官の略)。東京国税局の管内に84ある税務署の幹部まで指導する立場にあり、国税局のエリート集団といわれる。高い調査能力から、東京国税局の最強部隊と評されるほどだ。
伊丹十三監督の映画「マルサの女」などの影響もあって、「マルサ=国税局査察部」の存在を知る人は多い。マルサ(査察部)の任務は、裁判所の令状を取って強制調査に踏み込み、隠していた現金や貴金属など脱税の証拠を押さえ、検察庁に告発することだ。