元ホスト編集者のセリフにドキッ!
戸川 以前、私の担当になった編集者の方は、すっごく真面目で、ボタンダウンのシャツに銀縁の眼鏡で、髪型も普通の人。でも実は元ホストなの。確かに「何か」を持っているんだよね。ゴハンを一緒に食べに行くと、なんだか奢ってあげたくなっちゃう。
山口 お金を払ってあげたくなっちゃうんですか?
戸川 そういうムードがなんか出てるの。すごいイケメンってわけではなくて、痩せた普通の感じの人なんですけどね。その人は普段「なんとかです、なんとかです。えぇ、そこのところは、ちゃんとこちらのほうで」みたいにきっちり敬語で話すんだけど、ふとしたときなんかに、「ふふっ。可愛いな」とか言うの。私はドッ……、ドキドキしちゃった……(笑)。
山口 女心をくすぐるのが上手いというか(笑)。技が出ちゃうんですね。
戸川 そういう人を知っているから、私はリアリティを持って、「ホストの仕事は難しいですよ」と言います。前髪をM字バングにしたいなら、ホストじゃなくてもそういう髪型がOKな仕事に就けばいいと思うんだけど。
山口 いっぱいありますからね。結局、背中を全然押してませんけど(笑)。
戸川 だってこの人、ねぇ。ホストになってから……。
山口 苦労しそうですよね。やっぱり夜の仕事の厳しさをもう少しわかった上で考えたほうがいいんじゃないかな。
戸川 うーん、険しい道だと思うよ。ほら、ホストの方がやる「愚痴聞く男も、います! います!」っていうコールとかもあるじゃん。「います! います!」とかはみんなで言うやつ。実際に行ったことがないので、よくわからないけど。
山口 みんなで声揃えて、端から見てるぶんにはおもしろいですけどね。でも、ああいうのを身につけるのも大変そう。
戸川 ひとりのお客さんに同じことを何回も言っちゃいけないだろうから、セリフのバリエーションを何個も持っているでしょうしね。いろいろ練習してるんだと思うよ。
山口 この方は、今いる厳しい環境から解き放たれたい気持ちが強いのかもしれませんね。
戸川 でも解き放たれた先がホストクラブで働くことっていうのは、ちょーっと違うんじゃないかな? もしも本当に決心なさってるんだったら、「先輩方の背中を見ながら道なき道を行くんだ」みたいな覚悟で真面目にがんばっていただきたいですね。