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ひろゆきさんは「中学生っぽい」(笑)

――テレビとネットでは何が一番違うのでしょうか。

 まず視聴者の年齢層が違います。テレビはやっぱりご高齢の方がメインで、YouTubeの方は20代から40代、50代くらいまでがボリュームゾーンです。僕はテレ東で演歌番組もやっていたので、高齢者向けにコンテンツを作るのも楽しかったんですが、一方で同世代や若い世代がテレビから離れていってるなあ、というストレスはありました。それがYouTubeで番組をやりたいと思った理由でもあります。

 もうひとつテレビと異なるのは、YouTubeでは「忖度しない人」がウケるという点かもしれません。再生数が伸びないときでも、いくつか数字のいい動画があって、ひとつはYouTubeで人気の4歳の女の子に出演してもらったときだったんですね。子どもならではの何も忖度しないコメントがウケたんだとすれば、そういう人を探して出てもらえばいいじゃないか、と。それで、パリ在住で日本にしがらみのないひろゆきさんと、アメリカの大学に務めていて日本のアカデミックな世界としがらみがない成田さんに出てもらおうということになりました。

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――ひろゆきさんの起用は高橋さんがお決めになった?

 人選はインフルエンサーから学者まで、本当にあらゆる人の名前が挙がったんですが、その中で「ひろゆきさん、どうかなあ」と。ひろゆきさんが訴訟(管理人を務めていた「2ちゃんねる」に書き込まれた中傷被害者との民事訴訟)を抱えるなどレピュテーションリスクがあることも含めて、あらゆる方面からみんなで議論した上で、出てもらいました。

 ひろゆきさんというと「何でも論破」みたいなイメージが強いですけど、僕の印象は「好奇心に正直な人」。初めから論破してやろう、としているわけではなくて、質問に対して相手がゴマかしたり、本音で答えていないときに、あえて粘着的に「なぜ」と畳みかけることで、本質に迫ろうとしているように見えます。

 僕がひろゆきさんとお話しするときにいつも思うのが、良くも悪くも「中学生っぽい」(笑)。悪くすれば、大人としての「配慮が足りない」ように見えるけど、いい方に転べば「忖度がない」とも言えますよね。

ひろゆき氏 ©時事通信社

――実際ひろゆきさんと成田さんの2人が日経テレ東大学の看板番組でもある『Re:Hack』にMCとして出演するようになってから、登録者数が飛躍的に伸びました。

 お二人の登場前にも伸びるタイミングはあったんですが、飛躍的という意味ではそうですね。お二人とも弱者に対する目線が実は比較的優しくて、それでいてちゃんと自分の意見や本音を語ってくれる。何よりも「権力に媚びない」ということが、ネットの視聴者に受け入れられたんじゃないかと思います。

――番組の構成の仕方もテレビとはだいぶ違いますよね。

 テレ東にはテレ東の作法というのがあって。要は制作費が少ないから、ナレーションとか音楽は最小限にして、削れるところは全部削っていく(笑)。そういう「削り文化」があって、どこかに集中する替わり、どこかを諦めるという闘い方をしてきたわけです。

 これがYouTubeになると、それ以上にお金がない。そういう状況でコンテンツを量産するにはどうしたらいいか、と考えた末、「編集をやめないといけないな」と思ったんですね。とりあえず収録しておいて、後で編集しようという発想ではお金も労力もかかりすぎる。

 だから、収録したものをそのまま流せるように、自分自身も番組のマスコットキャラクター「ヒラメキパンダ」に考えを託して番組で流れを調整しました。そうすれば議論の中で疑問点があればその場ですぐに訊いて補足できるし、あるいは中立性を欠いているな、と感じたらわざと逆のポジションをとって、軌道修正したりといった編集が現場でできますから。出演者の方も編集で発言がカットされることもないから、こちらを信頼してくれるようになりますし。