そのリモートのインタビューも2020年12月30日が最後の機会だった。いつもはすぐ決まるインタビュー日程がなかなか決まらない中、「ごめん。年末で忙しいと思うけど、この日はどうかな」というメッセージを直前にいただいた。

3年前、坂本さんが漏らした「これでぼくが死んだ後でも…」

 そのインタビューは近況報告や世界の出来事に対する所感で通常どおりだったのだが、すこし気になったのはその12月に行なったミックスド・リアリティ(進化した仮想現実)作品のための3D映像収録の話になったときのことだ。

 しきりと「これでぼくが死んだ後でも、ぼくの演奏をヴァーチャル上でいつでも体験してもらうことができるんですよ」とおっしゃっていた。そんな縁起でもないこと言わないでくださいと頼んだが、このインタビューは、まだこの時点では公表していなかった新たな癌の手術直前だった。

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 翌月の闘病公表のときに思い至り、冷たい汗が生じたことは忘れられない。

 その作品とは今夏、世界各地で公開予定のミックスド・リアリティ『KAGAMI』(複合バーチャルコンサート)。坂本さんの在りし日の姿が見られる作品が日本でも早期に公開され、また演奏を聴ける日が来ることを願ってやまない。

 

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