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「ここで亡くなった方が最後に見た景色」
そんな私に師匠は声をかけてくれた。
「見て、この景色。ここで亡くなった人が最後に見た景色だよ。この景色を自分たちが忘れないでいることが、見知らぬ方への供養になると思うよ」
その言葉で私は顔を上げて周りの景色を眺めた。山間から遠くには街並みが見え、辺りは木々が生い茂り、人間の力ではびくともしない岩塊が、自然の力強さを感じさせる場所だった。
どんな気持ちでこの山を選んだのだろうか、どんな気持ちでこの山に入ったのだろうか、遭難した時、何を思ったのだろうか、ようやく自宅へ戻ることができて、安心されただろうか。
数日後、私はお花とお線香を手向けるため、再びこの現場を訪れた。
それから数ヶ月後、私たちが見つけたご遺体と、所持品にあったキャッシュカードの名義の方のDNA型が一致したとの報告を受けた。