宮沢りえがきょう4月6日、50歳の誕生日を迎えた。いまや日本を代表する女優といっても過言ではないが、彼女は「役者」と自称する。その理由を訊かれると、《なんか響きですね。女が優れたと書くこの言葉の響きに違和感があるというか、恥ずかしくて、役者と言われた時のほうがスッと馴染む》と答えている(『文藝春秋』2012年5月号)。
《役を“演じる”ことはありません。自分の肉体を通して、その役を“生きる”んです。だから、役が自分の中に誕生して、撮影や舞台が終わると葬る――いつもその繰り返しだと思っていますね》と信条を語る彼女には(『文藝春秋』2015年10月号)、たしかに女優よりも役者の肩書がふさわしい。
11歳でモデルとしてデビュー
その宮沢は一昨年の2021年に、14歳のときに出演した「三井のリハウス」のCMに34年ぶりに再出演し、現在も放送中である。同CMでは宮沢演じる「白鳥麗子」が、10代のときに住んでいた街にリハウス(家の住み替え)して戻ってきたという設定で、自分の娘と歩きながら「ママもあなたぐらいのときに、初めてリハウスしたの」と語る。回想として流れる往年のCMでは、転校先の教室ではにかみながら挨拶する宮沢の姿が初々しい。
11歳のときにモデルとしてデビューした宮沢だが、このCMで一気に世に知られることになった。カメラの前で言葉を発するのは初めてで、緊張しながら撮影にのぞんだが、それがかえって転校してきたというシチュエーションにハマったようだ。このとき、彼女がこもったようなしゃべり方で口にした白鳥麗子の名は人々の耳に残り、しばらくのあいだ街で「あっ、白鳥麗子ちゃん」などと声をかけられたという。ただ、その名前だけがどんどん蔓延していくことに戸惑い、けっしてうれしいものではなかった気がすると、のちのインタビューで振り返っている(『文藝春秋』2012年5月号)。