写真集の撮影中には、毎日撮影が終わると、その日撮った写真をすべて貼り出して、スタッフみんなで意見を交換した。撮り始めた当初は「撮ってみて恥ずかしかったらヤだ」と言っていた彼女だが、ホテルの部屋の壁いっぱいに貼り出された写真を見て、「美しいな。嫌じゃないな」と感じ、「これだったらいいです」とGOサインを出したという。のちのインタビューでは、それが世間にどんな衝撃を与えるかなんてことはまったく考えになく、《今いいものが撮れることがこの上ない喜びだった》と明かしている(『文藝春秋』2012年5月号)。
貴乃花との婚約発表、そして破局
関脇・貴花田(のちの横綱・貴乃花)との婚約を発表したのは、『Santa Fe』発売のちょうど1年後の1992年11月だった。若きスターどうしのカップルとあって大きな注目を集めるも、間もなくして破局。メディアではその原因をめぐりさまざまな憶測が飛び交い、彼女はバッシングにもさらされた。
1994年には、宝酒造の缶チューハイのCMに出演、このときのセリフ「すったもんだがありました」は、宮沢自身の実体験を思い起こさせ、この年の新語・流行語大賞も受賞した。CMを演出した市川準(映画監督としてものちに『トニー滝谷』で彼女を起用している)は、このセリフをどう言ってもらうか悩んだようだが、宮沢の「あっけらかんと言っちゃえばいいんじゃないですか」の一言で方向が決まったという。当人は、「すったもんだ」という言葉の意味をさほど深くとらえていなかったらしい(『広告批評』1994年5・6月号)。
このCMもあって、騒動を明るく乗り越えた感もあったが、心が傷つかなかったわけもなく、悔しい思いもたくさんした。数年後の対談では、当時を振り返ってこんな話をしている。
《いろんなことを言われたとき、インタビューに出て、一つずつ、「この記事は違いました、この記事は本当です、この記事のこの部分は本当だけれど、ここは嘘です」って反論することは簡単だったかもしれないけど、それは嫌だったんです。同じレベルになっちゃうような気がして。だったら、時間はかかるかもしれないけれど、自分が一番得意な分野で仕事をすることで、結果的に、反論できればいいんじゃないかって思ってたから》(『週刊文春』2001年8月2日号)