駅前広場の向こうにはラーメン店やらカラオケ店やらが見え、駅舎の傍らにはいかにも昭和の面影を残した雑居ビル。その中にもいくつもの居酒屋が入っている。
武蔵野線の高架沿いにも居酒屋が並び、駅前広場からまっすぐ千葉街道(国道14号)まで延びる短めの目抜き通り沿いにもそうした類いの店が軒を連ねる。「フィリピン・ロシア・日本 キャバレー」などといささか時代に取り残された感のあるネオン看板が乗っかっている雑居ビルもこの一角。その向いのビルには、知っている人は知っている、18歳以下お断りのロゴマークのお店も入っている。
……と、かくのごとく、西船橋駅前はこうしたよく言えば“庶民的”な町並みが広がっているのだ。わざわざ説明するまでもないだろう、競馬帰りの人たちが一杯ひっかけて帰るような、そうした町というわけである。
中山競馬場はまったく住宅地の中にある競馬場で、競馬場周辺には飲食店の類いはほとんどない。せいぜいドライブインのチェーン店があるくらいだ。船橋法典駅も似たようなものだから、競馬を終えてまずは酒、という人たちは西船橋に頼るしかない。とはいえ、西船橋は繁華街ではないから規模は小さめで、といったところなのだろう。
湧き水に恵まれた土地柄、かつてこのあたりは…
西船歓楽ゾーンは駅前と千葉街道の間のごく狭いエリアに集中していて、千葉街道から先は町の様相もいくらか変わってくる。千葉街道と武蔵野線の高架に挟まれた一角は小高い丘になっており、春日神社というお社が鎮座する。
街道沿いの勝間田公園は、もともとフナやドジョウのいる湧水池があったとか。この一帯、かつては多くの湧き水に恵まれていて、それを利用していまの西船橋駅南側などには水田が広がっていたという。
JRに京成、高速道路に街道…どうして「西船橋」にはこんなに色々集まっている?
勝間田公園を抜けて住宅地の間をさらに北に向かうと、広大な駐車場があってその向こうにまたもうひとつの線路と駅が見えてくる。京成本線の京成西船駅だ。
JR・メトロの西船橋駅とはまったく規模が違う小さな駅。駅前広場の類いはなく、細い路地を通って踏み切り脇に出る、というような典型的な私鉄の小駅といっていい。改札の目の前にはフェンスに隔てられた広い駐車場があるから、なんとかならないものかとも思うが、いろいろ事情があるのだろう。京成西船駅とJR西船橋駅は、踏切のある道を歩いて10分もかからず乗り継ぐことができる。