いつも“ナゾの駅”などというテーマであちこち回らせてもらっているが、少し目線を変えて“ナゾの路線”となると、どこが筆頭にあがるだろうか。

 まあ、何がナゾかは人それぞれで、いつも使っている駅や路線はナゾでも何でもないし、行ったことがなければとたんにナゾになる。だからあまり定義をうんぬんしても意味がないのだが、個人的にナゾ感がなかなか強いのは、首都圏でいえばJR武蔵野線ではないかと思っている。

 武蔵野線は、首都圏の外側、北半分をぐるりと半円状に回るいわば外環道の鉄道版だ。

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 首都圏の鉄道ネットワークは、だいたい東京のド真ん中、山手線の内側を中心にして放射状に広がっている。人も郊外から都心部へ流れてゆくのが一般的だ。しかし、もちろんそればかりではない。たとえば東京西部、多摩地区から浦和や大宮方面に直接向かいたい、などということもある。そんなときに実に役に立つのが外環道、もとい武蔵野線というわけだ。

 武蔵野線の何がナゾなのかというと、やっぱり駅である。放射状の郊外路線とひたすら接続しているというのは武蔵野線の便利さを支えているのだが、そうした数々の駅の名が、東西南北だらけなのだ。

首都圏の北半分をまわる“ナゾの路線「武蔵野線」の途中駅”「南越谷」には何がある?

 もっとわかりやすくいうと、“東○○駅”“西○○駅”“南○○駅”といった類いの駅名がやたらと多い。“新○○駅”というのもある。数えてみたら、全部で26駅あるうちの17駅までが頭に東西南北、もしくは“新”がつくのだ。

 だからどうしたと思われるかもしれない。確かに、お客として乗る分には東西南北がつこうがどうだろうが、あまりたいした問題ではない。ただ、東西南北や新がつくということは、どういうことなのかを少し考えてみる。

 基本的に、町の中心にある駅は東西南北などをつける必要がない。所沢駅、浦和駅、松戸駅などがそうだ。つまり、東西南北はそれぞれの町の中心ではなく、その周縁部にある駅だということを示している。わざわざこうして説明するまでもない、あたりまえのことである。武蔵野線は、首都圏の外縁を走っているだけでなく、それぞれの町においても中心から少し外れた周縁部を通っているというわけだ。

武蔵野線が誇る“看板ターミナル”「南越谷」には何がある?

 さて、そんな武蔵野線、どの駅のお客が多いのだろうか。答えは西船橋駅で、2021年度の1日平均乗車人員は11万人を超える。千葉県でいちばんお客の多い駅だから、武蔵野線トップは当然だ。そして第2位が今回の主役、南越谷駅である。

 南越谷駅のお客は、6万3141人(2021年度、1日平均乗車人員)。これは埼玉県内のJR駅では大宮・浦和・川口に次ぐという。