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人間は愚かですが…

坂本 言語学者のノーム・チョムスキーが生成文法という考え方を提唱し、人間の脳は発育にしたがってある種の形成がされるとしていますよね。そう考えると、ロゴスの呪縛から、人間は簡単には戻れないということになりますが、やはり自分たちが見ていることが本当の自然ではないのだという思考をしていくしかないということなのかもしれません。

福岡 人間は愚かなので、進歩しているのかどうかよくわからないですけれども、考えることはあきらめないでいようと思います。

生物学者・作家の福岡伸一さん ©文藝春秋

坂本 人間以外の生物に学ぶことは多いですよね。たとえば木のありようというものを考えると、その木単独で存在しているわけではなくて、常に土壌や大気、昆虫や微生物などの周囲の環境と相互作用しながら成長し、自分からも葉を茂らせ、落ち葉を大地の栄養として与えている。そういう、環境に包まれながら自らも環境を包んでいくといった、相互作用的な文明というものもあり得るのではないか、と思います。

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 たしかに難しいことなのかもしれないですけれども、ホモ・サピエンスという種はたかだか二〇万年ぐらいしか経っていない、種としては幼稚なものだと思うんですよね。生物学的な時間で見れば、ついこの前まで狩猟採集をしていて、産業革命からはせいぜい二〇〇年くらいしか経っていません。僕は生物学は素人ですけれども、生物の種というのは平均一〇〇万年くらい生きるんじゃないかと思っていて、そうすると人類はまだほんの赤ん坊で知恵も浅い生き物なんですよね。

 そんなふうに意識は幼いままなのに、人間一人あたりが地球環境に与える負荷は産業革命以降急激に増加しています。このまま環境を改変し過ぎて自分の首を締めていくということもあり得るけれども、そういう意味では、まだ成長していく余地はあるのかもしれません。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。