生き物を愛し、愛されてきたムツゴロウさんこと、畑正憲さん。4月5日、87歳で心筋梗塞のため死去した。

 財界さっぽろが発刊する北海道の犬情報誌「わんハート」では、2019年2月、ムツゴロウさんが84歳のときに、北海道標津郡中標津町の自宅で取材した。「動物と生きる」と決めた経緯やその心を開く術、今後の展望や死生観についてを語った記事を再録する。

バーニーズマウンテンドッグのルナとムツゴロウさん ©財界さっぽろ

昔から生きているものすべてに興味がある

――お会いできて光栄です。現在、おいくつになられましたか?

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ムツゴロウ(以下ムツ) 84歳になりました。身体の自由は利かないし、馬にも乗れないから嫌になっちゃいますよ。いまは東京の事務所と往き来しているけど、こっち(中標津)にいることが多いかな。もうそろそろ、いい空気を吸って静養したいですからね。

――最近はどのようなご活動を?

ムツ 週刊誌の執筆なんかがメーン。これまで明かせなかった、動物との恥ずかしい話なんかを書いていますよ。 いま僕が一緒に暮らしている犬は、ルナ(バーニーズマウンテンドッグ)だけ。家庭の事情で飼育が難しくなった知人から、譲り受けました。やっぱり犬と僕は、縁が切れないなぁ。娘(明日美さん)夫婦も近くに住んでいて、そこにはトイプードルが2匹。馬も飼育しています。

――テレビ番組「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」では21年間、世界中で数えきれないほどの動物と出会いました。

ムツ 僕は福岡生まれの満州育ち。狼と犬のハーフを飼ったり、幼少期から動物に囲まれて暮らしました。父が医者だったから、2間しかないオンボロ小屋に、いろんな患者が駆け込むわけ。僕は隣で産声も断末魔も聞かざるをえない。それから生きているものすべてに興味を持ちましたね。勉強が苦じゃなかったから、とにかくいろんな本を読みました。東京大学で動物学を専攻して、この先の人生、やっぱり動物と離れたくないなぁと。

©財界さっぽろ

――そして動物研究家、ノンフィクション作家になられた。

ムツ 僕はそもそもね“犬をつないで飼いたくない”という想いが原点にあって。それを実現するため、1971年に東京を離れて、浜中町にある無人島「嶮暮帰島」で暮らしたんですよ。野生ヒグマのどんべえと共生したのもこの頃です。当時まだ子どもだった娘にも、もっと深く生命に触れさせる必要があったから。翌年、浜中町に移住し、45町歩(約450万平方メートル)の「ムツゴロウ動物王国」を開国しました。犬は自由に走り、ほかにもさまざまな動物がいました。