「山本さんには連帯保証をさせます。手形も入れさせます」
小森はこうも話した。
この仕組みのもとで山本さんに貸し付けられるお金には不動産などによる保全はない。信用貸しということになる。
個人のお金を貸すのはイヤだった
そのため金銭消費貸借契約書上で個人保証をさせたうえ、山本さんの会社名義の約束手形まで入れさせるというのだ。
手形期日が来て、当座預金から引き落としできなければ不渡りになってしまう。わたしがお金を貸す山本さんは逃げられないようにするというのである。
18億円が焦げ付いてしまったら、山本さんや彼の会社に全額を弁済する資産はないだろう。
とはいえタワーマンションの最上階に住み、高級なベンツに乗っていて、家族をとても大切にしている人物だ。そんな山本さんが、失敗したら全財産をなげうつ覚悟でこの取引に参画してくれるという。
「いつ、手付けは打てるんや？」
不動産売却の段取りが整い、プレサンスから学校に手付金を支払う時期、つまり土地の売買契約成立の時期はいつなのかを確認した。
「3、4ヵ月後です」
移転先をどこにするかほぼ煮詰まっていて、あとは資金をどうやって調達するかの問題だけなのだろうなと思った。
もちろん個人のお金を18億も、しかも無担保で貸すのはイヤだった。
埋められてしまった「外堀」
これは会社の事業のための貸付金なので、会社で出せないかなと思い、担当の部署へ小森を連れて行き、
「小森がやってる例の学校の案件やけど、手付けを打つまでに先に金がいるみたいで、貸してくれと言うとんねんけど、会社で貸されへんかな？」
と問いかけた。
「それは無理です」
担当者は間髪入れずに返答する。会社の定款に金融業をうたっていないため、そりゃそうだろうと思った。
「そんならオレが貸さなアカンのかな」
そうつぶやいたのは、「そんなんあきません」と口添えしてくれることを期待したからである。
