ところが担当者は、
「社長が貸さはるんやったら、なんも言いませんけど」
と返してきた。
願っていた答えと正反対の言葉が戻って来たのである。
外堀を埋められたような気がした。
18億円の自己資金を拠出するのがイヤだから、会社のお金を借りることができないかと相談しにいったのに、できませんと言われ、「じゃあ、自分のお金を貸すのもダメ。明浄学院との案件はお流れにしろ」とは言いづらくなってしまったのである。
人生を激変させた「決断」
その当時、わたしのなかの認識では、会社のお金を個人のために使うことはダメだが、個人のお金を会社のために使うことは「あり」だと思っていた。むしろ個人がリスクをとって第三者への貸し付けを行うことは、会社のための自己犠牲でいいことなのだとさえ考えていた。
ふだんは社員に対し「会社のためにつくせ」と言っているにもかかわらず、個人の資金を出し渋って、会社のチャンスを逃す形になってしまっては、示しがつかない。あとに引けなくなって、小森に対し、
「わかったわ。出すわ」
と返答した。
小森と山本さんはこの案件を成功させようと一生懸命動くだろうし、貸し付けの相手方も学校法人というしっかりした組織で、プレサンスからの手付金という返済原資も存在し、ほんの3、4ヵ月後には返済もされるというのであれば、大きなリスクではない。
「近々、山本さんがあいさつに来ますので、よろしくお願いします」
こうして18億円の個人貸し付けはあっさり決まった。もちろん決めたのはわたしである。そしてこの決断がわたしの人生を大きく変えることになってしまう。
※本文中に登場する事件関係者・関係会社の一部には仮名を使用しています。