心からの善意でそう伝えると、
「そない言わはるけど、社長が貸したお金はこういう風に流れて行ったんやで」
と話しながら、1枚のチャート図を差し出した。
3年前の春、わたしが山本さんに貸し付けた18億円のうち13億円は、明浄学院の口座には入金されておらず、スクールメディアという佐橋(編集部注:学校法人「明浄学院」の前理事長)のダミー会社に送金されていた。残りの5億円は、学校の口座に入金されているものの、なぜか貸付金ではなく寄付金として処理されている。
「ウソやん?」
「ホンマやねん」
学校の再建費用として使うために学校に貸し付ける金なのだから、全額、貸付金として学校の口座に入ると聞いていた。なぜ山本さんはわたしから受け取った18億円をそのまま学校に直接入金していないのか。
18億円が一瞬でなくなっていた
さらにである。
佐橋のダミー会社の口座に入った13億円のうち10億円は吉村という当時の理事長に支払われており、そこからさらに岡山在住の人物などに流出しているというのだ。
また残りの3億円のうち2億円は、貸し付けから1年数ヵ月後に締結された学校とプレサンス間の土地売買を仲介した大阪府吹田市のエス企画という業者に流れていた。まだ学校に売買の手付金すら入っていないのに、土地売買についての仲介料が支払われていたとは論外である。
残る1億円も、佐橋の親族など、いろいろなところにばらまかれている。
わたしが山本さんを経由して学校に貸し付けたはずの18億円のうち、13億は学校以外の有象無象の手にわたってしまっていた。
「えっ? そんなはずないでぇ」
思わず口走る。
「いやいや、これが事実なんやから」
「そんなアホな」
頭のなかが混乱した。わたしが貸した18億円は手から離れるや、一瞬でなくなってしまっているということになるのではないか。とはいえ検察がここでウソを言うわけがない。
なにかが狂っている。自分の知らないところで得体の知れないことが起こっていることをようやく実感した。