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山口検事は気さくで明るく、そして早口でよくしゃべる。
同じ大学出身で、しかも同じ法学部法律学科だったこともあり、共通の話題にも事欠かない。
つねにタメ口で語りかけてくるので、こちらも自然とざっくばらんな口調になっていく。基本的に雑談が多かった。
「なんで18億も自分のお金、貸しはったん?」
そのなかで、事件について尋ねられたのは、
「なんで18億も自分のお金、貸しはったん?」
ということだった。
「普通の人間やったら貸さへんやんか?」
「いやいや、ボクは貸したんやから」
「なんで?」
「いや、あの土地が買いたかったからですよ」
「なにに使うって言われてたん?」
「移転費用とか再建費用に使うって頼まれたからですわ。これがないと進まないと言われたから貸しただけですやん」
雑談をはさんで同じことばかり聞いてくる。途中、買ってきてくれたおにぎりをほおばるなどして、夜の8時くらいまで聴取が続く。
取調べの終わり際にひと悶着
終わり際にひと悶着あった。携帯を返却できないと言い出したのである。
わたしは切れた。
いい人だと信用していただけに裏切られた気持ちもあったため、
「お前なあ、約束ぐらい守れや。オレらは商売してて、約束守らんヤツはアウトやでぇ。なんで、こんな約束守られへんねん。せやからオレは公務員、嫌いなんじゃ」
わたしの父親も地方公務員だったのだが、あえてこう言い放つと、山口検事は憤然と言い返してきた。
「なんなん、それ。公務員のこと悪く言わんといて。そんなん言われたらわたしも腹立つわぁ」
結局、携帯は戻してもらえないままその日は帰宅する。