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 山口検事は気さくで明るく、そして早口でよくしゃべる。

 同じ大学出身で、しかも同じ法学部法律学科だったこともあり、共通の話題にも事欠かない。

 つねにタメ口で語りかけてくるので、こちらも自然とざっくばらんな口調になっていく。基本的に雑談が多かった。

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「なんで18億も自分のお金、貸しはったん?」

 そのなかで、事件について尋ねられたのは、

「なんで18億も自分のお金、貸しはったん?」

 ということだった。

「普通の人間やったら貸さへんやんか?」

「いやいや、ボクは貸したんやから」

「なんで?」

「いや、あの土地が買いたかったからですよ」

「なにに使うって言われてたん?」

「移転費用とか再建費用に使うって頼まれたからですわ。これがないと進まないと言われたから貸しただけですやん」

※写真はイメージです ©iStock.com

 雑談をはさんで同じことばかり聞いてくる。途中、買ってきてくれたおにぎりをほおばるなどして、夜の8時くらいまで聴取が続く。

取調べの終わり際にひと悶着

 終わり際にひと悶着あった。携帯を返却できないと言い出したのである。

 わたしは切れた。

 いい人だと信用していただけに裏切られた気持ちもあったため、

「お前なあ、約束ぐらい守れや。オレらは商売してて、約束守らんヤツはアウトやでぇ。なんで、こんな約束守られへんねん。せやからオレは公務員、嫌いなんじゃ」

 わたしの父親も地方公務員だったのだが、あえてこう言い放つと、山口検事は憤然と言い返してきた。

「なんなん、それ。公務員のこと悪く言わんといて。そんなん言われたらわたしも腹立つわぁ」

 結局、携帯は戻してもらえないままその日は帰宅する。