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 閉鎖的な空間での孤独な日々は人を大きく変えてしまう。

 唯一、そばにいてくれる人こそ無二の支援者であるように感じてしまう。

 そんな全能の神から「大罪人」だと告げられた。

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 小森は気の弱い人間だ。

 記憶の通りしゃべってしまっては大罪人になってしまうとするなら、どうすべきなのか揺れ動いたことだろう。

「なるほどと思う話をしろ」と示唆

 さらに、

「会社とかから、今回の風評被害とか受けて、会社が非常な営業損害を受けたとか、株価が下がったとか言うことを受けたとしたら、あなたはその損害を賠償できます? 10億、20億じゃすまないですよね。それを背負う覚悟でいま、話をしていますか?」

 とたたみ掛けられる。

 このままの証言を続けると一生借金地獄が待っているとおっしゃるのである。

 そこで検事さまはこう導く。

「だとしたら、わたしがほしい話ではなくて、わたしがなるほどって思う話が出て来ないとおかしいですよね。でも、いまの少なくとも山岸さんに対する話って、全然なるほどじゃないですよ。それは小森さんおかしいですよ。本当の真実の話をしたら、なるほどなって話になるはずなんです」

 なるほどと思う話をしろと示唆する。この日の冒頭で山本さん(編集部注:事件に関与した不動産会社社長)の自白内容が詳しく説明されたのもこのためだ。

引き金となった「検察官の一言」

「結局あなたがなにをしているかというと、山岸さんをかばうためにウソをついているという評価になるんですよ」

 激しい罵倒が続いても、なんとか持ちこたえていた小森だが、冷静な言葉で自分の利害に関する誘導が行われた結果、虚偽供述を開始してしまったのである。

 弁護団は何度も何度も取調べ録音録画を視聴し直していたのだが、罵声を浴びせかける場面こそがターニングポイントではないかと気を取られていたため、その翌日という意外な時点の発見に時間がかかってしまったのだった。

 膨大な取調べの録音録画を反訳しても、そう簡単にターニングポイントが見つかるわけではない。ひとつの部分を怪しいと思い込んでしまうと、別の部分が問題であることを発見することが難しくなってしまう。

 取調べ過程の全反訳という前代未聞の取り組みの結果、わかったことのひとつである。