4月15日、わたしは明浄学院に対し1億8000万円を寄付した。山本さんらほかの被告が被害弁償をし、すでに全額弁済していたわたしのところに入ってきた幾ばくかのものも含めての金額である。学校はすでに提携先も見つかり、順調な再スタートを切ったと聞いていた。せめてもの罪滅ぼしである。
「明らかな証拠があるのに…」
わたしが保釈されてから後、出て来る資料やメールはことごとくこちら側に有利なものばかりだった。
そのたびに、
「こんなに明らかな証拠があるのに、検察は有罪が取れると思っているんですかね?」
と西先生に尋ねていたのだが、そのたびにはぐらかされていた。
西弁護士は弁護士職務経験制度が満了したため、アンダーソン・毛利・友常法律事務所を退所していったん裁判所へ戻ったが、家庭の事情により東京地方裁判所判事補を依願退官して弁護士になり、秋田真志先生率いる「しんゆう法律事務所」に入所。引き続き、わたしの裁判も担当してくれることになっていた。
敏腕弁護士が確信した“完全無罪”
公判も間近に迫ったある日のこと。
西先生が弁護方針の参考にするため、有罪・無罪両方の仮想判決を書いてくれた。読ませてもらうと、明らかに無罪判決の方に説得力があるように感じてしまう。
そこで、西先生に、
「無罪を示す証拠がこんなにいっぱいあるのに、検察はどうやってボクを有罪にするんですか。できるんですか」
と尋ねてしまう。
すると、
「わたしは弁護士ですので、公判について結果は保証できないことになっているんです。でも『にしよしゆき』という個人の立場で言うと勝てると思っています」
静かに、そしてキッパリと話してくれた。
※本文中に登場する事件関係者・関係会社の一部には仮名を使用しています。