ようやく見つかったターニングポイントは、意外にも激しく恫喝した日ではなく、その次の日である2019年12月9日の取調べにおいてのものだった。
田渕検事は前日の聴取において、山本さんたちがわたしの関与を認める話をしていると説明したうえ、
「もうさ、あなた詰んでるんだから。もう起訴ですよ、あなた。っていうか、有罪ですよ、確実に」
「もう遅いんだって。あなたひとりががんばったってしょうがないんだから。もう、あなた、プレサンスのなかでも売られてるんだよ。共犯者のなかでもうたわれてるんですよ」
と告げていた。
取調室で「あなたは大罪人ですよ」
この日も山本さんの自白の内容を詳しく説明。小森の話している内容は小森しか供述していないと示唆して心理的に孤立させた。
そのうえで、
「プレサンス側でこの事件に関係している人間として一番いけなかったの誰、ということになると。小森さんということになるけど、それで合っているの?」
「あなたは社長を騙しにかかっていったってことになるんだけど、そんなことする?」
「それはもう自分の手柄がほしいあまりですか。そうだとしたら、あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人ですよ」
と語りかける。
検察官は「神様」だった
佐橋(編集部注:学校法人「明浄学院」前理事長)が突然話を違えたというのが実際のところであったが、小森としてもわたしにそのことを隠蔽してしまったという後ろめたい事実がある。その弱点について、大阪地検特捜部という国家権力の最たるものから、詐欺であり大罪人だと言われてしまう。そしていまのままの供述を繰り返していると、小森がプレサンス社内で一番悪かったということになってしまうというのだ。
何度も言うが、それまでの日常生活から突然、切り離されて拘置所にぶち込まれ、接見禁止で誰とも話せない時間が続くと、検察官は神様になる。