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――とはいえ、これはあとづけの考え方になりますが、『BLACK』であえて断ち切った歴代ライダーの世界観とつながったり、ロボライダーやバイオライダーといったのちのフォームチェンジにつながるアイデアも生まれたり、『RX』は以降のシリーズにとって重要なキーとなる作品だったように思います。

 たしかに『RX』の存在は非常に大きいですね。昭和ライダー全盛の頃に仮面ライダー以外の傍流タイトルを手がけ、その後に宇宙刑事シリーズに始まるメタルヒーローシリーズなどをつくっていたプロデューサー、脚本陣、監督陣、アクション陣に、『BLACK』からメインスタッフが代わったんです。

 それが進歩と言えるかどうかわからないけど、確実に新しい仮面ライダー像に向かおうとしていたと思います。

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絶対的な指標だった「石ノ森章太郎」

最新作まで50年、東映は仮面ライダーを作り続けてきた(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

――白倉さんは1990年に東映へ入社し、『真・仮面ライダー 序章』を経て、平成仮面ライダーシリーズに参加。初めてチーフプロデューサーを担当した『仮面ライダーアギト』は、シリーズ定番となる複数ライダー制など新機軸を打ち出す一方、『サイボーグ009』を彷彿とさせる石ノ森章太郎的世界観の作品となりました。

『クウガ』以前と以降で大きく違うのは、石ノ森先生がご存命か否かだと思うんですよね。

 仮に『RX』とかが迷走に見えたとしても石ノ森先生が確固たる存在としていらっしゃって、「ライダーが巨大化!」(『ウルトラマンVS仮面ライダー』『仮面ライダーJ』)となったとしても、先生が「それもアリなんじゃないの」と後押ししてくれれば「仮面ライダー」として成立するんですよね。

 でも、そういう絶対的指標がないと、極端な話なんでもアリというか、「仮面ライダー」と銘打ちさえすれば全然違う企画であっても仮面ライダーがつくれてしまう。

 それだと、じゃあ「仮面ライダー」って何さ? という定義がよくわからなくなってしまうから、石ノ森章太郎というものをもう1回立てないと本当に迷走どころの騒ぎじゃないと思ってつくったのが『アギト』でした。それは、そのあとのシリーズなんかは考えてなかったからできたことですけど。

(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
取材・文=鴬谷五郎、撮影=杉山秀樹

 白倉氏の「仮面ライダー」の「原点」をめぐるインタビューの続きは、発売中の「週刊文春エンタ+」で。

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【公開情報】映画『シン・仮面ライダー』
監督:庵野秀明
出演:池松壮亮、浜辺美波、柄本佑 他

 

白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう): 1965年生まれ、東京都出身。1990年に東映に入社し、2001年に『仮面ライダーアギト』でチーフプロデューサーに初就任。以後、多数のシリーズ作品のプロデュースを務め、『シン・仮面ライダー』ではエグゼクティブプロデューサーを担当する。