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「地球のために立ち上がれ、と言われてもねぇ…」人類の運命を背負う戦隊ヒーローに抱く“ウソ臭さ”の正体《ドンブラザーズは「戦いを強制しない」》

プロデューサー・白倉伸一郎氏インタビュー#3

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 スーパー戦隊シリーズ最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系にて、毎週日曜午前9:30~放送中)。物語はいよいよ佳境に入った。

 視聴者側としてずっと謎だったのは「ドンブラザーズとは何なのか。何を目指すのか」だ。

 これまでのスーパー戦隊は必ず、地球平和のために立ち上がり、一致団結して巨悪に立ち向かってきた。「スーパー戦隊=正義>巨悪」という公式は不可侵とされ、代々受け継がれてきたが、今回の作品ではいまだこの公式が当てはまらない。

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 本作の東映プロデューサー・白倉伸一郎氏は「今の時代、『地球平和のために立ち上がろう!』と、本気で思えます?」と話す。スーパー戦隊の“お約束”にはウソ臭さがあると言う白倉氏に、その真意を訊いた。(全3回の3回目/1回目を読む)

上段左から、桃井タロウ(ドンモモタロウ)、猿原真一(サルブラザー)、鬼頭はるか(オニシスター) 
下段左から、犬塚翼(イヌブラザー)、雉野つよし(キジブラザー)、桃谷ジロウ(ドンドラゴクウ・ドントラボルト) Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

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ヒーローは愛嬌、敵はイケメン

──話が進むにつれて、最初は敵勢力だった脳人の3人、中でもソノイ(富永勇也)の人気がどんどん高まっています。これは想定内でしたか。

脳人のリーダー格であるソノイは、戦士ではあるが穏やかで、物腰に品格を感じさせる Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

白倉P 脳人はもともと、「すごくスタイリッシュでかっこいいライバルキャラ」のイメージだったんです。たとえるなら、『機動戦士ガンダム』のシャアのような。だから、きっと人気が出るだろうと思っていました。

 スーパー戦隊は「イケメンヒーロー」とよくいわれますが、実際に大切なのはイケメンかどうかよりも、愛嬌。視聴者の皆さんに愛着を持っていただけるかが、とても重要なんです。

ドンブラザーズと脳人のキャラ設定

──確かに、親近感があるかどうかは、ポイントな気がします。

白倉P そうなんです。ですから、ヒーローであるドンブラザーズ側は「庶民的で親しみやすいキャラ」にしました。

 一方、脳人側は人間よりも高次元の存在という設定なので、「スタイリッシュで美しいキャラ」となればいいなと。だから、ソノイはいかにもイケメンですよね。

 ……ただ、今や「おでんの人」になってますが(笑)。

【解説】ドンブラザーズと脳人の関係

 

 ドンブラザーズ・桃井タロウと脳人・ソノイは、互いが敵だと知らなかった頃、戦いを終えたら一緒におでんを食べる約束をしていた。やがて、互いに真の敵は誰かを悟り、第13話でソノイがタロウを消滅させてしまう。

 

ソノイ(右)はタロウ(左)を斬りつけて消滅させる Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

 しかし、第15話でソノイがドンブラザーズのメンバーたちにタロウの救出法を提示し、タロウは復活。さらに第27話、今度はタロウがソノイを倒してしまう。

 

葬式でタロウ汁を浴びるソノイ(右)Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映 

 その後、ソノイは自身の葬式にて《タロウ汁》を浴び復活し、タロウっぽいキャラクターに変化。ところが、おでん屋でカラシを食べて涙を流した瞬間、元のソノイの性格に戻る。

ヒーローと敵を結びつける「おでん」

──タロウとソノイを結びつける重要な要素は、なぜか「おでん」です。タロウはソノイに一緒におでんを食べる約束をしたり、ソノイはおでんのカラシを食べることで《タロウ汁》が抜け、本来の自分に戻ったり。

 2人の重要な舞台として、なぜ「おでん屋」が選ばれたのでしょうか。

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