文春オンライン

スーパー迷(?)戦隊『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が“お約束”を破りまくるワケ「嫉妬で“鬼化”する男性ピンク、指名手配中ブラック、宅配便バイトレッド…」

プロデューサー・白倉伸一郎氏インタビュー#1

 ドラマ界には、数十年続く長寿シリーズがある。1975年に始まった「スーパー戦隊シリーズ」もそのひとつだ。現在放送中の最新作は『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系にて、毎週日曜午前9:30~放送中)。放送後はSNSのトレンド上位に関連ワードが並ぶが、実はこの作品、制作発表時から「情報量多すぎ」と注目されていた。

 理由は数多ある。まず、モチーフは桃太郎なのに、戦隊チームの名は「暴太郎(あばたろう)」。ちょんまげを結った主人公・ドンモモタロウを中心に、イヌ、サル、キジがいるのはいいとして、チーム内になぜか「オニ」もいて、それが紅一点だ。ちなみに、戦隊チームのピンク戦士は男性で「既婚者」だし、ブラックは指名手配の逃亡者。

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』。戦隊チームのビジュアルも雑然としている。ちょんまげの主人公を、ツノが生えたオニ、筋骨隆々のサル、身長100センチの3等身のイヌ、身長220センチのキジが囲み、凸凹シルエットをつくっている Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

 桃太郎モチーフなのに、戦隊チームは一向に鬼ヶ島を目指す様子がないし、スーパー戦隊の必須要素である戦闘シーンが非常に短く、“花形”といわれる巨大ロボ戦すらオマケ程度。毎回「〇〇戦隊、〇〇ジャー!」と全員が叫ぶ、お約束の《名乗り》もない。そもそも、戦闘時に戦隊全員が揃わない……。

ADVERTISEMENT

 このように、放送を重ねるにつれ混迷が極まっており、「ドンブラザーズ」で検索すると、「カオス」「わけわからん」「狂気」「不穏」「サイコパス」などの関連ワードが浮かぶ状態なのだ。

情報量が多すぎる「あらすじ」

 ​まず、ドンブラザーズを観たことがない、観ているが話が複雑で覚えられていない、という読者のために作品内容を振り返ってみよう。ドンブラのコアファンのみなさんは飛ばしていただいて構わない。

【『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』あらすじ】

 

 桃太郎が、サル・イヌ・キジをお供に鬼退治したように、ドンモモタロウ(レッド)が、サルブラザー(ブルー)、イヌブラザー(ブラック)、キジブラザー(ピンク)、さらにオニシスター(イエロー)と共に悪に立ち向かう。〈中略〉人間の欲望から生まれるモンスター“ヒトツ鬼(き)”と、ヒトツ鬼を人間ごと消去しようとする謎の組織“脳人(ノート)”と戦い、人々を守る!……しかし、それはもう少し先のおはなし。

(公式サイトより)

 

【暴太郎戦隊ドンブラザーズ メンバー】

 

上段左から、桃井タロウ(ドンモモタロウ)、猿原真一(サルブラザー)、鬼頭はるか(オニシスター)。下段左から、犬塚翼(イヌブラザー)、雉野つよし(キジブラザー)、桃谷ジロウ(ドンドラゴクウ・ドントラボルト) Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

桃井タロウ(ドンモモタロウ)

21歳。脳人(ノート)が住む異世界「イデオン」をかつて統治したドン王家の末裔で、赤ん坊の頃に桃型の特殊カプセルに乗り、人間界にやってきた。カプセルを拾った男・桃井陣(和田聰宏)のもとで育ったが、わけあって家出。今はひとり暮らしで、シロクマ宅配便でバイト中。嘘がつけず、嘘をつくと死ぬ。

 

猿原真一(サルブラザー)

21歳。几帳面で博学な風流人。近隣の人々からは「教授」と呼ばれ、相談相手に。広い一軒家で俳句を詠むなど、自由気ままに暮らしている。

 

鬼頭はるか(オニシスター) 

17歳→18歳。女子高生。漫画賞を受賞し、栄光をつかみかけるが、戦士になったことでご破算に。

 

犬塚翼(イヌブラザー)

24歳→25歳。無実の罪を着せられ指名手配された、真犯人を探す逃亡者。皮肉屋で他人を信用せず、利己的。「秘密」(内容は不明)を守り1年間逃げ通せば、かつて同じ劇団所属の恋人同士だった「夏美」を返してもらえる約束だった。

 

雉野つよし(キジブラザー)

33歳。コンサル会社に勤めるサラリーマンで妻帯者。妻は「みほちゃん」。平凡で幸せな新婚生活を送っていたが、サングラスを装着したことでキジブラザーになり、不幸続きに。自分の夢を持てず、妻の夢に懸けている。

 

桃谷ジロウ(ドンドラゴクウ・ドンラボルト)

21歳。第14話から登場。21年前、桃型カプセルで流れ着き、施設で育てられた。実は終盤のキーマン?

 なぜこんなカオスな作品に? 作品をめぐるさまざまな謎に迫るべく、プロデューサーの白倉氏に緊急インタビューを行った。(全3回の1回目/続きを読む)

関連記事