──そうですね。スーパー戦隊シリーズといえば、第2話以降は敵が必ず登場、否応なしに戦う……というイメージです。
白倉P そのワンパターンを繰り返すのは避けたくて。だから『ドンブラザーズ』では、「普通の人たちを描く」という当初の狙いを最終回まで引っ張るために、登場人物の日常生活を描くことに重点をおいています。
「全国指名手配の逃亡者」が戦隊メンバーになった理由
──『ドンブラザーズ』では、戦隊チームについても斬新な試みをしていますね。
まず、犬塚翼(イヌブラザー)は、“指名手配中の逃亡者”という前代未聞の設定です。これはどういう経緯で?
白倉P スーパー戦隊で一番面白いのは、「メンバーが集まっていくところ」だと思っているんです。映画『七人の侍』などもそうですが、集まったら、あとは戦って終わりですよね。もちろん戦いのシーンもいいんですが、集まっていく過程が、やっぱり一番面白い。
──確かに、だんだんメンバーが増えるのは、見ていてワクワクします。
白倉P スーパー戦隊シリーズ全46作の歴史を見てみると、メンバーが全員集まったところがクライマックスで、その後は同じ展開を繰り返す……という作品が多いんです。
そこで、『ドンブラザーズ』の設定を考えるときに、戦隊チームはメンバーがなかなか集まらない、いっそのこと「ずっと集まらない人」がいると面白いんじゃないか……と思ったんですよね。
いつも一人の犬塚は、“おいしい”存在
──なるほど。まず、メンバーがいつも揃わないという前提があり、それは集まれない人がいるせいだ、なぜなら「逃げているから」……と肉付けされていったんですね。
白倉P 普通のスーパー戦隊シリーズは、まず全員が集合して、敵地に乗り込むのが定石です。でも「戦隊チームは突然、強制的に招集される」という設定にすれば、メンバーのひとりは逃げ続けられるよね、という思い付きでした。
イヌブラザーの犬塚は、仲間外れにされているわけではないんですよ。みんなと別行動なだけに、ひとりの独立したストーリーが描かれて、ある意味おいしい存在なんです。他のメンバーに嫉妬されているくらいです。