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スーパー迷(?)戦隊『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が“お約束”を破りまくるワケ「嫉妬で“鬼化”する男性ピンク、指名手配中ブラック、宅配便バイトレッド…」

プロデューサー・白倉伸一郎氏インタビュー#1

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──そうですね。スーパー戦隊シリーズといえば、第2話以降は敵が必ず登場、否応なしに戦う……というイメージです。

桃井タロウ(ドンモモタロウ)はシロクマ宅配便で働く青年 Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

白倉P そのワンパターンを繰り返すのは避けたくて。だから『ドンブラザーズ』では、「普通の人たちを描く」という当初の狙いを最終回まで引っ張るために、登場人物の日常生活を描くことに重点をおいています。

「全国指名手配の逃亡者」が戦隊メンバーになった理由

──『ドンブラザーズ』では、戦隊チームについても斬新な試みをしていますね。

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犬塚翼(イヌブラザー)は無実の罪を着せられ指名手配中。常に逃げているため、単独行動が多い Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

 まず、犬塚翼(イヌブラザー)は、“指名手配中の逃亡者”という前代未聞の設定です。これはどういう経緯で?

白倉P スーパー戦隊で一番面白いのは、「メンバーが集まっていくところ」だと思っているんです。映画『七人の侍』などもそうですが、集まったら、あとは戦って終わりですよね。もちろん戦いのシーンもいいんですが、集まっていく過程が、やっぱり一番面白い。

──確かに、だんだんメンバーが増えるのは、見ていてワクワクします。

白倉P スーパー戦隊シリーズ全46作の歴史を見てみると、メンバーが全員集まったところがクライマックスで、その後は同じ展開を繰り返す……という作品が多いんです。

 そこで、『ドンブラザーズ』の設定を考えるときに、戦隊チームはメンバーがなかなか集まらない、いっそのこと「ずっと集まらない人」がいると面白いんじゃないか……と思ったんですよね。

いつも一人の犬塚は、“おいしい”存在

──なるほど。まず、メンバーがいつも揃わないという前提があり、それは集まれない人がいるせいだ、なぜなら「逃げているから」……と肉付けされていったんですね。

白倉P 普通のスーパー戦隊シリーズは、まず全員が集合して、敵地に乗り込むのが定石です。でも「戦隊チームは突然、強制的に招集される」という設定にすれば、メンバーのひとりは逃げ続けられるよね、という思い付きでした。

「俺はずっと迷子だ……」と呟き、一人で夕日に向かう犬塚翼 Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

 イヌブラザーの犬塚は、仲間外れにされているわけではないんですよ。みんなと別行動なだけに、ひとりの独立したストーリーが描かれて、ある意味おいしい存在なんです。他のメンバーに嫉妬されているくらいです。