ピンク戦士が男、イエロー戦士は女性
──『ドンブラザーズ』は、ジェンダーの描き方も特徴的です。これまでのスーパー戦隊シリーズの中で初めて、ピンク戦士が男性(雉野つよし/キジブラザー)になりました。
雉野本人には夢がなく、妻に夢を託し、妻のことでいつも頭がいっぱい。三角関係をこじらせた末、愛情と嫉妬や憎しみから、3回もヒトツ鬼(人間の欲望から生まれるモンスター)になってしまいます。
一方、イエロー戦士は女性(鬼頭はるか/オニシスター)で、戦隊チームなのにオニ。彼女は、カオス展開する話のツッコミ的存在であると同時に、白目を剥いたり、全力で変顔をしたり。
ネット上では「戦隊史上初の顔芸ヒロイン」とも言われるほどの、三枚目担当なのも驚きです。
白倉P オニシスターの鬼頭はるかは、ドンブラザーズの紅一点です。これを、男性目線で考えた「女性的なヒロイン」にするのは、絶対によくないと思っていました。
ゲストのキャラクターには記号的な男性、女性も登場しますが、レギュラーメンバーはそういう描き方をしたくない。男女関係なく、「人間として描く」ことを大切にしています。
「戦闘はいつも全員で」からの脱却
──では、スーパー戦隊シリーズをつくるとき、やっていいことと悪いことのラインはどこに置くのでしょうか。
白倉P まず、性的表現はよろしくないです。これはスーパー戦隊シリーズだからではなく、子ども向け番組なので。これ以外には、制限はありません。
ただ、これまでのスーパー戦隊シリーズの縛りとして、どんなに大ゲンカをしたり、ドロドロの恋愛関係になっても、「敵との戦闘現場には、5人が必ず揃っている」というのがありました。
だから、過去作には「戦隊チームの仲間同士で殴り合いのケンカをしていた。でも、敵が現れた途端、何事もなかったかのように、全員が団結して戦う」という、矛盾するようなエピソードもあったんですよ。
なかなか全員揃って変身できない
──その点、『ドンブラザーズ』では、強制的に招集されてしまいますね。
白倉P そうです。さらには勝手に合体までされてしまうので、ケンカしていようが、恋愛でドロドロしようが関係ない(笑)。それに、戦隊チームには逃亡者がいるので、なかなか全員が顔を合わせることはありません。
『ドンブラザーズ』は恋愛を主軸にしたドラマではないですが、このような設定をつくったおかげで、毎回わりと自由に人を動かしたり、話を展開したりできるメリットがありますね。