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スタイリッシュな脳人俳優の“舞台裏の関係性”

白倉P さらに言うと、「みんなで団結して何かを倒す」物語ではないので、役者さん同士もお互いを応援したり、励ましたり、あるいは先輩が後輩に助言を与えたり……という関係なのかなと思って見ています。

──「多様性の時代」といわれますが、戦隊内の関係性も変化しているということですか。

白倉P 『ドンブラザーズ』は“みんなで頑張る”話ではなく、各々が自分の役割で頑張らないといけない。だから、誰かの努力が成果となって実を結ぶと、周りもそのことを喜ぶし、互いがもっと上へ引き上げようとするんです。

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──それは、戦隊チームだけでなく?

白倉P ええ。脳人でいうと、ソノイ役の富永勇也さんは役者経験が豊富ですが、ソノニ役の宮崎あみささんは、演技の経験があまりなかったんです。

ソノニ(宮崎あみさ) Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映

 で、現場で宮崎さんが監督にほめられると、富永さんは、ソノザ役のタカハシシンノスケさんと一緒に、まるで自分のことのように喜ぶんですよ。

「5人の若人よ、立ち上がれ!」への違和感

──『ドンブラザーズ』は、スーパー戦隊シリーズでは通算第46作目です。かつての作品と最新作では、何がどう変わりましたか。

白倉P 昭和のスーパー戦隊シリーズの典型的パターンとしては、「宇宙から侵略者が攻めてきて地球がピンチ、5人の戦士が立ち上がり、みんなで戦いに行く」というのがありました。

スーパー戦隊シリーズ第4作『電子戦隊デンジマン』(’80~’81)では、異次元宇宙からベーダー一族が地球に襲来する『電子戦隊デンジマン』DVD COLLECTION/ TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

 でも、令和も5年目となった現在、僕はこのパターンに違和感を覚えます。「今、そんな気持ちに本当になれるのか?」と。

──現実的ではない。

白倉P いやらしい言い方をすると、5人の若者が立ち上がるとして、「だったら他の人たちは何してるの?」とツッコミたくなるんですよ。

──首相は何してるんだって話ですよね。

白倉P 日本人が1億人いるとして、大ピンチに立ち上がるのはたった5人……ここに不甲斐なさ、ウソ臭さがどうしても生まれてしまう。

 昭和、平成の時代までは、そこは「お約束」として押し切ってしまうものでした。でも今、「お約束だから仕方ない」という免罪符が許されるでしょうか。現実を生きる視聴者の皆さんの感覚と、フィクションの空想世界とのギャップが、年々きつくなっている気がします。