白倉P まず、『ドンブラザーズ』では食事シーンが多く登場しますが、これは地べたを這いつくばって生きる人々を描くうえで、食事は非常に大事な記号だからという考えがあります。
おでん屋を舞台に据えたのは、井上大先生(脚本家の井上敏樹氏)です。
──でも、美丈夫で品を感じさせるソノイには、もっとオシャレな食べ物も似合いそうです。
白倉P 確かにそうですね。だからこそ、おでんなんですよ。
──どういうことでしょう?
白倉P 同じ「食」でも、屋台でおでんを食べる人と、気取ったフレンチレストランでナイフとフォークを使って食べる人は、住む世界が違う人種に見えますよね。
ヒーローたちが「市井の庶民的な人々で、好きな食べ物は屋台のおでんやラーメン」というイメージだとしたら、脳人は「正装して、白いクロスを敷いたテーブルで食事をする人たち」のイメージ。中でも、ソノイはその代表格です。
ところが、脳人たちは人間界で過ごすうちに、こちらの世界にすっかり馴染んでしまったんです。
ビジュアル系イケメンが屋台にいるギャップ
──そうでした。徐々に人間化していくソノイたち……。
白倉P だから、物語の中で2つの勢力を結びつける食べ物を考えると、いわゆる「セレブグルメ」ではないもの。それはやはり、人間である戦隊チームが好きな、おでんやラーメンなどだろう……という結論になりました。
──それで、おでんなんですね。
白倉P 元は正装して食事するような脳人たちが、今では「おでんの屋台」にいる。彼らのルックスといる場所には大きな隔たりがありますが、それをビジュアルで見せることで、ソノイたちが徐々に人間寄りになっていることを表現しています。
実際にあんなルックスで屋台にいたら相当目立ちますが、彼らの心はかなり人間に近づいていますから、本人たちとしては違和感がないはずです(笑)。
『ドンブラザーズ』は個々が独立した物語
──ドンブラザーズや脳人がおでん屋や「喫茶どんぶら」に集まって、飲み食いしたりお喋りするだけの場面が、よく見るとすごく面白いですね。
白倉P それは、回を追うごとに、各キャラクターの魅力が出てきたからですね。役者さんたちの頑張りのおかげです。
実際に、『ドンブラザーズ』の役者さんたちは非常に仲がいいんですよ。
──画面の中だけの関係ではないんですね。
白倉P 他のスーパー戦隊シリーズ作品も、役者さんたちはだいたい同年代で、長い撮影期間を一緒に過ごすので、学校生活やクラブ活動的な仲良し感が生まれることは多いんです。
でも、『ドンブラザーズ』は他の作品とはちょっと違う気がします。各々の役割が非常に特徴的で、しかも全員の役割が違うので、それぞれが己のポジションを全うしなければ成立しない。
──そうですね。メインの登場人物はみな、仕事や性格がバラバラで、それぞれが独立している印象です。