“もしターザンが実在したら、きっとムツゴロウさんみたいな人なんだろうな……”というのが、ムツゴロウさんを何回か取材させていただいた感慨だった。そのムツゴロウさんの愛称で知られる作家・動物研究家・プロ雀士の畑正憲さんが令和5年4月5日に亡くなった。死因は心筋梗塞。享年87。

 ちなみに、“ムツゴロウ”のニックネームは、てっきり有明海の泥海に棲息するユニークな魚、ムツゴロウから採られたものと思いきや、エッセイ集「ムツゴロウの博物志」刊行にあたり、出版社の意向でそう名付けられたという。

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 畑さんは1935年4月17日生まれ。福岡県福岡市出身。医師だった父親が満州国に赴任したため、幼少期を満蒙開拓団の村で過ごすことになった。ここで狼と犬の雑種を飼う等動物に慣れ親しむ生活を送ったことがその後の畑さんの人生を決めたようにも思う。

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 太平洋戦争さなかに帰国。父の郷里・大分県日田市で中高時代を過ごしたあと、東京大学理科II類に現役合格。父からは医学部への進学を期待されるも大いに悩んだ結果、動物学を専攻。

 その後は学習研究社の映像部門に就職し主に学習映画の製作に携わったが、会社の方針に反発。ほどなく辞め、文筆業に専念していく。

 ’67年、「われら動物みな兄弟」を刊行。翌年日本エッセイスト・クラブ賞を受賞すると、’70年にはムツゴロウシリーズ第1作「ムツゴロウの博物志」を発表した。以後、ノンフィクション作家として活躍する。

 その間、中学時代の同級生だった女性と結婚。一女をもうけるが、その娘が動物と慣れ親しむ生活をさせたがゆえに、“お魚がかわいそう”と言って魚を拒食。その姿に衝撃を受け、より突っ込んだ生命教育を行おうと、’71年、北海道厚岸郡浜中町に移住し、’72年に「ムツゴロウ動物王国」を開園した。これがフジテレビ系で’80年からスタートし、約20年間にわたって放送され国民から愛された『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』の起源となった。