「牛となかよくなったときには牛のおしっこを飲みました。そうすると彼らの考えていることがわかるんです」
そんな畑さんだが、記者会見に同席した記者のなかには“ムツゴロウさんの会見に来ると気分が悪くなる”という者もあった。
「動物となかよくなるには同じ環境で、飲食をともにすることですよ。たとえばゾウなんかは水飲み場もトイレもいっしょ。嫌でもゾウたちの糞尿混じりの水を飲むことになります」
「牛となかよくなったときには牛のおしっこを飲みました。そうすると彼らの考えていることがわかるんです」
等々、ムツゴロウさんは立食パーティー風のホテルの会見場でもこういったエピソードを普通にお話しされていた。どうもそれを聞くと気持ち悪くなり、せっかくの食事もできなくなってしまう、という記者もちらほらいたのである。
その話を聞いて苦笑していた筆者も、海外ロケ先で大きななめくじを生で頬張り、“美味しい”ともらし、動物たちと熱い抱擁の果てにディープ・キスをするムツゴロウさんの映像などを振り返ると、ダメな人にはダメなんだろうな……と、気持ちが分からないでもなかった。今だから言える話である。
動物と本気で最前線へ…ムツゴロウさんを動かした信念
番組のある回で、王国に侵入したキツネ(キタキツネ?)を番犬代わりの犬たちが寄ってたかって攻撃。キツネは重傷を負い、畑さんたちの懸命の介護の甲斐もなく、息を引き取る映像があった。
犬たちの“ここまでやるんじゃなかった……”的に反省している神妙な様子も映し出され、そのシーンが印象に残ったことを、あるときご本人にお話ししたことがある。すると急に表情が変わり、
「そう、あのときは頭にきて。あいつらに『やり過ぎだっ!』と怒鳴って、1匹1匹ぶん殴ったんですよ。この子(キツネ)の痛みを知れと思って」
と返答があった。先の畑さんのお言葉や信条をずっと聞かされていると、いい悪いではなく、自ら最前線の危険地帯に身を置き、苦楽をともにする、という強い信念がこの人にはあるんだなと思わされたことを覚えている。