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「もしターザンが実在したら、きっと…」どうぶつ王国の巨人”ムツゴロウさんという人

2023/04/08

genre : エンタメ, 芸能

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 ’79年には標津郡中標津町にも広大なムツ牧場を開園。この北海道での動物たちとの生活をもとに書いたエッセイやセミ・ドキュメンタリーで作家としての地位を確立した。

 それがフジテレビの日枝久(現・フジサンケイグループ代表)氏の目に留まり、’80年12月29日にドキュメンタリー番組『ムツゴロウ動物王国』が放送される。この番組がファミリー層を中心に大ヒットすることになり、年に2~3回放送される人気シリーズとなった。

 その後、’86年に公開され、同年の興行収入第1位(歴代では第12位の98億円)となった映画『子猫物語』では、畑さんは原作・脚本・監督(市川崑さんが協力監督)を務めた。この作品をきっかけにムツゴロウの名は国内はおろか世界中に知れ渡り、『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』は確固たる地位を築いていく。

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「たくさん噛まれたら、こちらも噛んでお返ししなきゃあいけません」

 ‘90年代に入り、テレビ誌記者になった筆者がムツゴロウさんに取材をする機会にめぐまれたのは、年に数度行われた、番組の記者会見に参加したときのことだった。

 とにかく畑さんは、もう終始番組まんまの方だった。あの人(動物?)なつっこい笑顔で「動物は可愛いんですゥ」と言われるとこちらも思わずニコッとなってしまう。そこで繰り返しおっしゃって印象に残っていたのが、次のような言葉だ。

「この番組を観て、みんなが動物のことをもっともっと知って、可愛がるようになったら殺処分が減るかな? そうなってもらえるように僕も動物たちもますますがんばります」

「動物が噛むのは愛情表現なんです。だからどんなに強く噛まれても、それは愛情の強さだと思ってください。たくさん噛まれたら、こちらも噛んでお返ししなきゃあいけません」

 “動物たちもますますがんばる”や“噛んでお返し”等、作家である畑さんならではのフレーズにクスリとさせられつつも、妙に説得力を感じてしまった。これが「ムツゴロウさん」の「ムツゴロウさん」たるゆえんで、「動物となかよくなると彼らの言葉がわかるようになります。みなさんも愛情たっぷりに話しかけているとそのうち答えるようになりますから。試してみてください」と、言われた際には、筆者もその帰り道、町で見かけた犬や猫に話しかけてしまったほどだ。

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