文春オンライン

「プライドがそうさせている」免許返納まで7年、家族とモメて最後は事故で…高齢ドライバーの家族との“向き合い方”

『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』より #2

note

並木 70歳以上の人は免許更新のときに「高齢者講習」を受けなければなりませんが、とくに75歳以上の人は過去3年間にさかのぼって交通違反があった場合に、「運転技能検査」を受けなければなりません。

 これは2022年5月から始まった新しい制度で、免許試験場や教習所などで運転の実地検査を行います。実地検査をパスできなければ免許更新ができません。実地検査をパスできれば、「認知機能検査」を受けることになっています。

 この検査によって、「記憶力・判断力が低くなっている方(認知症のおそれがある方)」と、「記憶力・判断力に心配のない方(認知機能が低下しているおそれがない方)」の2つに分けられます。

ADVERTISEMENT

 ちなみに以前の検査制度では、認知症が疑われ医師の診断書が必要な第1分類と、認知機能の衰えが懸念されるという第2分類、そして問題のない第3分類の3つに分かれていました。これがなぜ変更されたかというと、警察の統計によれば、第1分類とそれ以外の交通事故率が「ほぼ変わらない」という結果が出たからなんです。

認知機能の低下を知ることが運転をやめるきっかけになる

 だから実地検査を行うことになったんでしょうか?

並木 そうですね、高齢者の方からも「検査に通るのだろうか」と心配の声が多数あがり、注目されていました。けれど制度がスタートして半年ほどの時点で、検査に通らない人は、警察の当初の予測よりも少なくなっているようです。

藤谷 認知機能と運転技能は必ずしも一致するわけではないんですね。またしても先入観。

並木 検査で「認知症のおそれがある」と判断されると、運転を続けるには、認知症かそうでないかを示す医師の診断書が必要になります。でも、実際は約45%(※1)の人が、診断書を取る前に自分で返納しちゃうんです。

 お医者さんの診断結果によって免許を失ってしまうよりは、自分から返したほうが精神的なショックは軽そうですね。

並木 そうですね。家族や周囲から「認知症」のレッテルを貼られたくない高齢者は多いと思います。プライドがそうさせているケースもあるのかもしれませんが、認知機能の低下を知ることが、運転をやめるきっかけになった人も多いのではないでしょうか。

 

免許を返納するとタクシークーポンをもらえる行政も

藤谷 ふむふむ、危ない運転をする人は免許継続できないし、反対に高齢になっても安全な運転をする人は胸を張って継続できるという仕組みになりつつあるんですね。

 免許を返納した後のサポートも充実してきているそうです。免許を自主返納すると「運転経歴証明書」というものがもらえて、それがあるとタクシークーポンをもらえるようなサービスをやっている行政もあるそうです。地域差もあるとは思いますが。

並木 免許の返納や取り消し処分によって運転ができなくなる前から、電車やバスなどの公共交通機関を使って活動することも選択肢に入れて、少しずつ慣れていくといいと思います。電車に乗る楽しみなんかも、新たに見つかるかもしれませんし。

蟹 バンドが解散してしまう前に「推し増・推し変」しておけ! ということですね。