文春オンライン

「プライドがそうさせている」免許返納まで7年、家族とモメて最後は事故で…高齢ドライバーの家族との“向き合い方”

『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』より #2

note

並木 例えば盆暮れに帰省することがあるなら、運転席側に傷がないか確認してみてください。運転席の反対側は死角だから多少こすることがある。だけど運転席側がベコベコだと認知機能が衰えているので、周囲と相談して検査をすすめてみてはいかがでしょう。連絡をとるときには、文字よりも会話のほうが相手の様子がわかるので、メールやメッセージアプリよりも電話がおすすめですよ。

 それから、高齢者の事故で若い人たちと違って圧倒的に多いのはハンドル操作ミスとペダルの踏み間違いなんですが、最近(2021年11月以降)販売される新型車には、衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務化されています。とはいえ、新車を購入するのは金銭的にちょっとむずかしいかも……とか、今すぐ対策したいなどの場合には、踏み間違い防止装置を5万~10万円くらいで後付けもできるので、新車を買うつもりのない高齢ドライバーにも、ぜひおすすめしてもらいたいです。

運転という「趣味」の代わりになるものは?

藤谷 運転自体が趣味になっている人だと、納得して返納しても喪失感はすごそう……。免許を返納して車を手放したとたん、認知症が進むケースもあるそうですし。

ADVERTISEMENT

 私たちはこの2年以上、コロナ禍によって趣味の現場を奪われてきたので、免許を奪われたと感じる高齢者の気持ちも少しはわかるような気がします。

並木 免許を返納する前に「移行期間」というか、心の準備をする期間を設けるのもよいかもしれません。近場なら車ではなく電車やバスの公共交通機関や徒歩にするとか……。

 ウチの父もそんな感じでした。駅の近くに引っ越してからは「もう車いらなくない?」と免許を返納していました。ウチの場合は運転そのものにこだわりはなかったのでスムーズでしたが。

藤谷 運転そのものが趣味の場合、車に代わる趣味でおすすめのものはありますか?

並木 最近は、レーシングゲームで非常によくできたものがたくさんありますね。実在するコースを走ったりいろんなパーツがあったり、グラフィックもかなりリアルなんです。うちの団体の理事長もできるだけ永く運転を楽しみたいってタイプだから、いろんなゲームソフトを試して運転の感覚をリアルに楽しめるゲームを探していますね(笑)。

 

 私たちがオンラインでライブ参戦する感覚に近いですかね。100%代わりにはならないけど、選択肢があるのは救いです。

藤谷 ウチの父も「もうスロットには行かない」といって、一時期その代わりに「ドラクエ」のカジノをやっていましたね(笑)。

並木 教習所は私有地だから、たまに免許返納した人たちのために開放してくれるとか、あるいは自動車メーカーの私有地で運転できるような「もう一度運転を体験できる」サービスがあるといいかもしれません。

蟹 安全な場での「再結成イベント」ですね。我々もそういう機会に多々救われていますので、そうなってくれることを願います。

バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた

バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた

藤谷 千明 ,蟹 めんま ,LIFULL 介護

ホーム社

2023年3月24日 発売

「プライドがそうさせている」免許返納まで7年、家族とモメて最後は事故で…高齢ドライバーの家族との“向き合い方”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー