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 さらに近年では、北朝鮮はサイバー攻撃を外貨獲得の手段として活用しています。国連の制裁によって外貨を手に入れることが困難になった北朝鮮は、サイバーセキュリティが弱い国の中央銀行を狙って攻撃を仕掛けたり、現金を盗むよりも手軽な暗号資産(仮想通貨)をサイバー攻撃によって盗み出したりしているのです。

サイバー攻撃で「数千億円」盗むことにも成功

 中央銀行を狙ったものでは、2016年にバングラデシュ中央銀行にサイバー攻撃を仕掛け、約8100万ドル(約120億円)を盗み出すことに成功しています。また、暗号資産に至っては、地の暗号資産取引所などから2021年だけで約4億ドル(約600億円)を盗み出し、さらに2022年3月には、オンラインゲーム内で取引される暗号資産、約6億2000万ドル(約930億円)分を一度に盗むことに成功したと言われています。

 2022年の北朝鮮は、これでもかというほどミサイルを連発していましたが、こうしたミサイルや核を開発する資金を、サイバー攻撃によって得ているのです。

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世界史を変えたスパイたち(日経BP)

 近年の北朝鮮のサイバー攻撃には日本政府も警鐘を鳴らしています。2022年には金融庁、警察庁、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が連名で、「北朝鮮当局の下部組織とされるラザルスと呼称されるサイバー攻撃グループによる暗号資産関連事業者等を標的としたサイバー攻撃について」と題する注意喚起を行いました。日本で「北朝鮮」「ラザルス」という固有名詞が入った形で注意喚起が行われるのは珍しいことです。それほど、北朝鮮のサイバー窃盗組織の活動が危険で活発だ、ということなのでしょう。

 ハーバード大学ケネディ公共政策大学院ベルファーセンターは2022年9月、世界30カ国のサイバー能力をランク付けし、発表しました。上位は1位アメリカ、2位中国、3位ロシアと続き、北朝鮮は14位。日本は北朝鮮以下の16位にランキングされています。北朝鮮のサイバー能力は未知数ですが、少なくとも日本よりは実力があるようです。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。