突如、起訴事実を認め「お詫びしたい」
それまでの公判ではさらに、Dさん、Eさんと各被害者についての審理が続いていたが、被告人質問まで時間を要したのは丸田被告がその多くについて認否を留保、あるいは否認していたためだ。検察官が証拠請求した被害者らの供述調書を弁護側が不同意とするため、被害者が法廷に出て証言するという証人尋問が主に続いていた。
ところが「記憶がない」などと罪状認否で主張していたはずの丸田被告は、被告人質問で突如、起訴事実をほぼ認めたのだった。その理由を弁護人に問われ、こう答えた。
「記憶が曖昧な部分があり、明確な答えをしていませんでしたが、心が痛み、罪を受け入れようという形になりました。知人夫妻に娘が産まれ、愛しながら育てる様子を嬉しく思うと同時に、大事に育てられた人たちを傷つけてしまったんだなと思い、受け入れお詫びしたいと思うようになりました」
弁護人の質問に、よどみなくすらすらと答える被告は、自身の歪んだ性癖が形作られた経緯も次のように説明した。
「最初の会社に入ってから、職場で……悩み事があり心を病んでしまったので神経内科に相談しました。そこはいい加減な病院で、薬を多く出したり、院長が歌っている謎のCDを制作して配るような病院でした。処方された向精神薬の副作用……興奮で眠れず、不眠がひどくなり睡眠薬を処方してもらうようになりました」
被告が言うには、処方してもらっていた薬の副作用で不眠、食欲不振、性欲が抑えられないなどの症状が発生していたのだそうだ。特に性欲については「仕事中に気がついたら何時間もトイレにこもり、自慰行為をしていたり、夕方ごろに自慰行為をすると気づくと朝になっていた」など、異常さを感じていたと明かす。だが、仕事に差し障るほど性欲を持て余していたにもかかわらず、薬は「飲むのを止めるとベッドから起き上がれなくなるので止めなかった」という。
「母親を元凶とする女性不信」
爆発しそうな性欲に加え、被告にはさらに“母親を元凶とする女性不信”がもともとあり、女性と交際するなかでさらに不信感が募っていったのだそうだ。被告は、就活における自己分析のごとく、自身の内面を語り続けた。
「母は私の小さい頃から……えー、精神を病んでおり、薬をずっと服用しているような人でした。その間はおとなしいが、薬が切れたりすると、暴れたり暴力を振るったり部屋をむちゃくちゃにする……何度も措置入院していて、見えない人物が見えていたり会話したりしていた。母は中学校の時までは生きていましたが、高校に入って亡くなった。これがのちのちの私の事件に影響があると思う。一つは、人とどう関わったらいいのか分からない。二つ目は、愛されたい……」
割って入り「自分で自己分析したんですか?」と呆れたように尋ねる裁判長に対して「私はそう思っている」と断言する丸田被告は、こうした経験や、交際相手に浮気をされたことなどから「女性に裏切られても大丈夫なように、常に次の彼女を作るようにしていた」とさらに分析を重ねていく。
事件当時、丸田被告には交際相手がいたにもかかわらず、何人もの女性に対して犯行を重ねていた理由は、こうした背景があったと言いたいようだ。