公判はひっそりと続いていた。就職活動中の女子大学生や女性会社員らに対し、睡眠作用のある薬物を飲ませて性的暴行を繰り返していたとして起訴されているリクルートコミュニケーションズ(現在はリクルートに吸収合併)元社員、丸田憲司朗被告。
最初に逮捕されたのは2020年11月、30歳のころ。知人である30代女性に対し、睡眠作用のある薬を入れた酒を飲ませて性的暴行に及んだという準強制性交等容疑だった。逮捕はこの一度では終わらず、翌月にも同容疑で逮捕となる。就職活動中だった20代女性に2020年7月、同様の手口で性的暴行を加えたというものだ。女性とは、就活中の学生が企業に勤める社会人と情報交換できる就活アプリで知り合った。
睡眠薬を混入された被害者は…
その後も逮捕は続いた。2021年9月には、2017年4月に会社員の20代女性に、これまでの手口と同様、睡眠作用のある薬物を混入させた酒を飲ませ性的暴行を加えたという容疑で9度目の逮捕。同年10月には、知人女性に対し2019年9月、睡眠薬入りの酒を飲ませ、わいせつな行為をしようとしたとして、準強制性交未遂容疑での逮捕。
こうして10回の逮捕を経て、最終的に丸田被告は準強制性交等、住居侵入、準強姦、準強制性交等未遂、準強制わいせつで起訴された。被害者は10名。手口は共通しており、飲食中に隙を見て被害者の飲み物などに睡眠薬を混入させたうえ、抗拒不能となった被害者に対し、性交やわいせつ行為に及んでいたとされる。犯行時の様子を動画撮影しており、このとき被害者の身分証も記録していた。
初公判で「記憶がない」と一部否認
東京地裁で初公判が開かれたのは9度目の逮捕直前である2021年8月31日。公判は捜査と並行して進められていた。この日は被害者AさんからCさんまでに対する事件の起訴状読み上げや証拠書類の取り調べが行われたが、丸田被告は「記憶がなく……意図して薬物を摂取させたことはない」など、一部を否認していた。体にピチピチにフィットした黒いジャケットにワイシャツ、黒いズボン。マスクで口元は見えないがぱっちりとした目元が印象的だ。就活アプリで出会った女性に就活のアドバイスをしていたという丸田被告、面接のようにしっかりと答えると思いきや、罪状認否は小声で聞き取りづらく、当時の裁判長も「えっ!?」「聞こえない!」などと何度も聞き直していた。
そんな初公判から1年以上が過ぎ、今年2月7日。ようやく被告人質問が行われた。長い時を経て、裁判長も替わっていた。