「十文字一家は、もともとはこの集落の人ではありません。本家は隣の集落にあるはずで、近代になってから、越してきた一家です。こうした集落外の一家が一族を築くには、集落の血を混ぜる掟があり、好彦さんは母と妹を嫁がせたことで、いわば血を分けてやったのです。その恩も忘れ、いわば他所者だった一家が、横目で栄えていき、祭りではハッピを着て、山車を堂々と引いている。そうしたなか、砂渡家は集落でも1、2位を争う有力者だったのに、身内に不幸が続いて、跡継ぎも何も残せなかった。自分が惨めだったんでしょうね」
噂好きのムラの女性たちが言う悪口が本人の耳に
加えて、砂渡さんの怒りの火に油を注いだのは、ムラの陰口だったという。前述の近隣住民が続ける。
「村の女性たちからもコソコソと裏で馬鹿にされていました。女性が集まる村の“オシラアソバセ”などの風習行事では、噂好きの女性たちが言っている悪口が本人の耳に入っていたようで、村の女性たちを憎んでいるようでした。集落で炊事をする準備で女性たちが集まっているだけでも、目の敵にしていましたから」
半世紀以上の怒りを溜め込んでいた90代の老人は、本当にかつての“実家”に火を放ったのか――。土着文化が根強く残る“ムラ”での怨讐は深い。
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