長閑な田園が広がる、青森県六戸町。遅咲きの桜が満開を迎えるなか、広大な敷地にあった木造住宅が全焼し、9歳の女児を含む尊い5人の命が奪われたのは、13日未明のことだった。
六戸町犬落瀬の十文字利美さん(68)方から「家が燃えている」と13日午前1時、地元の消防に通報があった。スマホで119番したのは、燃え盛る炎から逃げるため、自宅の屋根を伝って2階から降りてきた利美さんの孫(13)。結局、340平方メートルの木造住宅は全焼し、駆け付けた消防隊員によって何とか火は消し止められたが、自宅からは5人の遺体が発見された。火災を目撃した近隣住民が当時の状況を振り返る。
親族の自宅を容疑者不詳のまま放火の疑いで家宅捜索
「爆発するように燃えていて、電柱よりも高い火柱があがっていました。火の粉が自宅まで飛んできましたが、幸いにも風向きでこちらに向かわなかったので延焼することは避けられました。でも、深夜に消防車がたくさん来るし、本当にパニック状態でしたよ」
焼け跡から分かってきた状況について、社会部記者が解説する。
「家には利美さんを含む8人が暮らしていました。そのうち、現在も連絡が取れていないのは、利美さんの義母・和子さん(88)、妻・弘子さん(67)、次女・抄知(さち)さん(39)、孫の弥羽さん(9)の4人です。遺体は性別もわからないほど焼けてしまっていますが、警察は4人が火事に巻き込まれたとみて検証作業を続けています。また、和子さんの兄で近所に住む砂渡好彦さん(92)とも連絡が取れておらず、残る1人の遺体は砂渡さんの可能性が高い。
さらに、現場には砂渡さん名義の黒い軽自動車が残されており、後部座席からは灯油を入れる赤いポリタンクが1つ見つかりました。燃え方の激しさや火災中の刺激臭などから、灯油などが使われた疑いもあり、県警は砂渡さんの自宅を容疑者不詳のまま放火の疑いで家宅捜索しています」