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中国で"1日に4回拘束”されたルポライターが解説…全日本人ビジネスマンに知らせたい“ チャイナリスクの実態”

2023/04/18

genre : ライフ, 国際

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【(3)「敏感」な人物の政治的拘束】
 中国の各種インテリジェンス部門が、党や国家のために、脅威の除去や情報収集、本人や所属先への恫喝、外交カードへの活用などの明確かつハイレベルな目的を持って、綿密な計画に基づきあなたを逮捕拘束するケースである。逮捕の根拠は「反スパイ法」違反のほか、名目的に汚職など別件の口実が用いられることもある。

©AFLO

 もうお分かりだろうが、本当に深刻な事態は、この「政治的拘束」だけである。近年発生した日中友好団体関係者や日本人研究者の拘束、さらに今回の北京の50代男性の拘束などは、いずれもおそらくこれに該当する。

 政治的拘束は、中国の国家機関があなたという「個人」を明確なターゲットにしているため、解決には大変時間がかかる。2019年の研究者拘束事件のように、日本政府が(めずらしく)真剣に救出活動をおこなった場合でも、拘束期間は2ヶ月以上におよんだ。

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 仮に有罪判決を受けた場合、数年~十数年の投獄や、最悪の場合は死刑もあり得る(日本人が受けた前例はないものの「反スパイ法」の最高刑は死刑である)。あなたが中国国家にとって非常に不都合な人物だった場合は、獄中で「癌にさせられる」などの事態も想定され得る。

 もっとも、政治的拘束は非常に深刻であるだけに、表沙汰にならなかったものを含めても過去10年間で数十件程度しか起きていないと考えられる。

 中国在住邦人は10万人以上いる。年間の政治的拘束の被害者数を2.5人とした場合、1年間ごとに0.0025%(4万分の1)のリスクだ。ちなみに、われわれが日本で1年間に交通事故に遭う確率は0.2%(500分の1)である。

 現場のビジネス感覚としては、一般の駐在員や出張者にはほぼ無関係な話だと考えてしまって構わないだろう(もちろん、「だから邦人拘束は大したことではない」「中国の体制に問題はない」などと言いたいわけではない)。

 それでは、各種の「拘束」を避けるためには、具体的にどのような行動を控えたほうがいいのか。こちらについては後編で詳しく論じていこう。

中国で"1日に4回拘束”されたルポライターが解説…全日本人ビジネスマンに知らせたい“ チャイナリスクの実態”

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