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中国で"1日に4回拘束”されたルポライターが解説…全日本人ビジネスマンに知らせたい“ チャイナリスクの実態”

2023/04/18

genre : ライフ, 国際

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 つまり、各種のインテリジェンス部門や警備部門、それらと関係を持つ公安や民間協力者が、あなたの行為が中国の国家安全に不都合であると判断し、その行為の停止や事情聴取を目的に拘束をおこなうのだ。私の例で言えば、外国人の立ち入りが禁止された習近平の父親の墓に自分から接近する行為などがこれに該当する。

 もっとも、当局者が問題視したのは、あなたという「個人」ではなく「行為」にすぎないので、相手の動機が消滅すれば釈放してもらえる。具体的には、求めに応じて写真や動画を消去する、故意の行動ではなかったと理解してもらう、釈放後は相手の管轄外(省外、国外)に出ると約束するなどした場合だ。多くの場合、拘束期間は数時間から1日程度で済む。

 この「拘束」は【(1)】と同じく、現場の判断でおこなわれただけであり、要注意人物としての情報が国家安全システムの内部で強くアピールされる可能性は低い(なんらかの履歴は残るだろうが)。私が過去に受けた「拘束」も、実はこのパターンの範囲におさまっている。

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 釈放後のあなたが現地で社会生活を営むことが著しく困難になったり、中国に入国できなくなったりすることも、通常はあまりないだろう(ただし、自分が住んでいる地元の街で拘束された場合は、運が悪いと他の街への引っ越しや職場の変更が必要になる)。

 もっとも、事態がよほど深刻な場合は軽度の拷問を受けることもある。私の同業者のフリーライターには、2010年代前半に食品偽装問題がささやかれていた工場に突撃したことで現地の公安に拘束され、「宴会」を名目に徹底的に泥酔させられてから一晩にわたる尋問を受けてパソコンの中身をあらためられた……、という人もいる。

「個人」がターゲットの拘束は危険

 身の危険や長期の軟禁・監禁をともなう「拘束」には、黒社会や反政府ゲリラによるものもあるが、こちらは国家による拘束とは事情が違うので割愛しよう(そもそも現代中国の場合、黒社会はともかく反政府ゲリラに拘束される事態はほぼ起きない)。では、国家による「拘束」のなかで、もっとも危険な事態とはどういうものか?