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中国で"1日に4回拘束”されたルポライターが解説…全日本人ビジネスマンに知らせたい“ チャイナリスクの実態”

2023/04/18

genre : ライフ, 国際

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 今年3月末、北京に駐在する50代の日本人男性ビジネスマンが中国の国家安全部門に拘束されたニュースが大きく報じられた。中国で「反スパイ法」が施行された翌年(2015年)以降、当局に政治的な拘束を受けたとみられる日本人は、少なくとも17人におよぶ。なかでも今回は、駐在員が対象となっただけに日本社会の衝撃は大きかった。一部の週刊誌は「中国だと捕まる危険な行動リスト」という特集記事まで組んでいる。

 もっとも、日本人の拘束問題についての報道や論説は、実は中国在住者や中国に詳しい人から違和感を持たれることが多い。今回の記事では、中国の事情に詳しくない一般の日本人ビジネスマンや留学生、その家族向けに、あなたが政治的拘束を受けないための地に足のついたアドバイスを書いていくことにしたい。

©AFLO

私の「拘束」経験

 本題に入る前に、中国ルポライターである筆者本人の「拘束」やそれに近い経験を紹介しておこう。かなり以前の話ながら、たとえば以下のようなものがある。

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【2011年2月】
 中国・ミャンマー国境で国境警備担当の武装警察から短期間の拘束を受け尋問。30分程度で解放。

【2014年3月】
 新疆ウイグル自治区の田舎町ポスカムで、現地の公安などから1日に4回拘束および尋問(拙著『移民 棄民 遺民』参照)。

【2015年5月】
 陝西省で外国人の立ち入りが禁止されている習近平の父親の墓に接近して墓参りをしてみたところ、対テロ部隊の特警に拘束され尋問。30分程度で解放(拙著『さいはての中国』参照)。

【2015年5月】
 文化大革命期に習近平が下放されていた陝西省の梁家河村に行くため、中国旅行社を通じて個人ツアーをアレンジしたところ、全行程にガイドの「友達」が同行(拙著『さいはての中国』参照)。

 2015年夏以降は自分も慎重になったことや、危ない仕事を断れるようになったことで、その後の「拘束」はご無沙汰である。せいぜい、2017年5月に広東省深圳市郊外のネトゲ廃人村の取材中(この記事を参照)に、天に誓って健全なマッサージを受けていたところ、地元の公安が店にガサ入れに来て顔写真を撮られたくらいだろうか。

 とはいえ、私はこの問題について多少は論じる資格があるはずである。