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未解決事件を追う

家族4人全員を惨殺した中国人犯が、死刑判決当日に拘置所の面会室で私に語ったこと「判決が出て心が落ち着いたら…」

福岡一家4人殺人事件

2022/08/20

 2003年6月に起きた中国人留学生3人組による福岡県福岡市の衣料品販売業・Aさん(当時41)一家4人殺害事件。犯人の1人、元専門学校生の魏巍(ギギ=中国読みはウェイウェイ)被告(31)は、強盗殺人や死体遺棄などの罪に問われ、一審、二審ともに死刑判決を受けた。

 11年10月20日の最高裁判決では、上告が棄却され死刑が確定。判決当日、私は魏巍被告の最後の肉声を聞いている(※同被告の死刑執行は19年12月26日)。

「判決が出て心が落ち着いたら、中国の両親に手紙を出すつもりです」

 10月20日、福岡拘置所の面会室で、坊主頭に銀縁眼鏡をかけた魏巍被告は、はっきりと日本語で口にした。両親には強盗殺人などで再逮捕された7年前、『悔』と1文字だけ書いた手紙を送って以来、手紙を出していない。

※本記事は、ノンフィクションライターの小野一光氏による「文藝春秋」2011年12月号の特集「真相開封35 アンタッチャブル事件史」への寄稿に、事件の経過などについて一部加筆修正を加え、転載したものです。(肩書・年齢等は記事掲載時のまま)

◆ ◆ ◆

 犯行4日後に上海へ逃亡し、03年8月、公安当局に身柄を拘束され、中国で裁かれた共犯の元日本語学校生・王亮受刑者(29)は無期懲役となり、王受刑者の証言で拘束された元私立大留学生・楊寧元死刑囚(当時25)には05年7月に刑が執行されている。

 同事件を発覚当初から取材していた私は、中国河南省新密市に住む魏被告の両親に会い、その際に両親から同被告に向けた言葉を届けたことをきっかけに、福岡拘置所に勾留されている魏被告との面会を重ねてきた。

魏が父に出した〈悔〉の手紙

死体遺棄場所を下見したうえで家族4人全員を惨殺

 事前に殺人を想定して遺棄用の重しや手錠を用意し、死体遺棄場所を下見したうえで家族4人全員を惨殺。その遺体(Aさんのみ仮死状態)をわざわざ車で埠頭に運んで遺棄するという犯行内容から、当初、この事件は中国人留学生3人のほかに、犯行を指示した“黒幕”がいるのではないかとの疑惑が持たれていた。

「現場捜査員の誰もが、中国人留学生3人による金銭目的の犯行という結論に疑問を抱いていました。しかし捜査本部が解散した以上、どうしようもなかった」(当時の捜査関係者)

 当然、私も魏被告本人に複数回にわたってその他の共犯者の有無、指示をした人物の有無について尋ねてきた。しかし、犯行計画は王受刑者と楊元死刑囚によって事前に立てられており、魏被告が仲間として加わったのは事件のわずか4日前にすぎない。そのため魏被告の答えは決まって「私にはわからないです」というものだった。

2019年に死刑が執行された魏巍

「王受刑者から『少なくとも1人100万円にはなる。それ以上かも』との誘いを受け、学費の支払いに困っていた魏被告は犯行に加わっています。しかし実際に奪ったのは約3万7000円で、分け前として貰えたのは1万円でした。裁判で魏被告は『犯行計画を聞いてしまったため、誘いを断ればいずれ自分が殺されるのではないかと思った』と証言しています」(地元司法担当記者)

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