「興味あるッス」と私は答えた。ちょっと恥ずかしかったが、私は意欲に満ちていた。
「ちょっと、やってみようかと思って」
生まれて初めて誰かとスキンケアの雑談をしたのだが、佐々木さんが自然に答えてくれて安心したのだった。資生堂が好き、というのもいい情報だった。迷ったらメーカーで選ぶのもひとつの方法かもしれない。「商品を選ぶ基準がわからない」という話をしたら、佐々木さんもそこまで詳しくはなく、インスタで見かけた製品を試して失敗することもよくあるそうだ。使ってみないとわからないので「ぶつかり稽古の気分で買っている」らしい。
なるほどそうかと思った。私は、特に根拠もなく「女性はみなスキンケアについてよく知っているものだ」と思い込んでいたが、そんなわけはなく、人によって差があるのだった。どれを買っていいのか判断がつかないのも一緒だった。そう考えると少し気が楽になった。
また、スキンケアについて人に話すことで、恥ずかしさが減少したようにも感じた。いまならドラッグストアの化粧品売り場にだって行けるのではないか。小さなことかもしれないが、雑談って大事だなと私はあらためて感じた。
佐々木さんからスキンケアについて教えてもらって、最初にやるべきことが見えてきた。私は容姿の改善を焦るあまり、シミだけをどうにかしようと考えてしまっていた。まずは基礎として化粧水で保湿し、乳液でうるおいを持続させる。これを習慣化した上で、さらに美容液を使ってシミ対策していく。スキンケアの道筋ができたような気がした。ひとまず、化粧水、乳液を入手した上で、メラノCC(美容液)を使ってみるのはどうか。
ネットを検索して化粧水を調べていくうち、評判のいい化粧水も見つかった。どうやら保湿と美白効果が一緒になっているらしいのだ。効くなら何でもやってやろうという気になっていた。教えてもらったdプログラムも考えたが、自分の肌が「ゆらぎがち」かどうかわからなかったため断念。
生まれて初めて美白にトライすることになった私は、期待のあまり「効きすぎちゃったらどうしよう」と本気で心配していた。あまりにも効果が出すぎて、シミひとつない、生まれたての赤ちゃんみたいな肌になったら、同一人物として扱ってもらえないのではないか。「どちら様ですか?」なんて声をかけられたりして。そんなことを空想しているうち、私はいままで経験したことのないような変化の前段階にいると感じられ、胸の高鳴りを覚えたのだった。
翌朝のとてつもない変化
ドラッグストアで目当ての化粧水と乳液、美容液を手に入れた私は、これらがもたらすはずの劇的な効果を想像しながら、足早に帰宅した。買うべき製品があらかじめ決まっており、心の準備も整っていたため、前回の混乱とは打って変わってスムーズに買うことができた。