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「自分さえ黙っておけば…」けど、気持ちは追い付かず

「飲み会の翌日、なんでキスされたんだろうと嫌悪感と気持ち悪さがこみあげてきました。X氏とは仕事上で仲がいいと思っていたし、忘年会でも私のことを『もっと上にあげたいんだ』と働きぶりに期待しているような発言もしてくれていました。でも本当は私のことを変な目で見ていたんだと考えると辛くなってしまって……。

 今回の件を我慢して何事もなかったように振る舞えば、また同僚たちと一緒に仕事を頑張れるのではないかと考えました。そしたらこれまで通り、キャリアアップを目指せるとも思いました。でも飲み会のことを思い出すとどうしても苦しくなってしまう。

 それにセクハラについて会社に告発したら、私は職場にいられなくなっちゃうんじゃないかと不安でした」

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 A子さんは「自分さえ黙っておけば、今まで通り仕事ができる」と考え、一度は被害を忘れようとした。だが気持ちが追い付かず、一晩悩んだ末、翌21日に女性の上司に被害について報告したという。

A子さん ©文藝春秋

再発防止を願いコンプライアンス委員会への報告を決意

 事情を知った上司は、社内のコンプライアンス委員会に対し報告するかどうかA子さんに尋ねたという。A子さんは悩んだ末、委員会への報告を決めた。

「ほかの従業員のことも考えたら、悪いことは悪いとちゃんと訴えるべきだと。会社全体のためにもコンプライアンス委員会でセクハラについて調査してもらおうと思ったんです」

 クラシアンでは社内のコンプライアンス委員会の調査を経て、結果によって賞罰委員会が開かれるという。セクハラについて調査をすることで、「再発防止にもつながるのでは」とA子さんは考えていた。

 A子さんはセクハラについての報告書を作成できる精神状態ではなかったため、上司が代理で作成したうえで、その内容を22日、コンプライアンス委員会に報告した。その後、A子さんは上司と調査の進捗について何度か連絡を取るなかで、A子さんへの聞き取りが予定されていることが伝えられたという。

 だが、A子さんへの聞き取りは行われないまま、調査が終了したことだけを1月末に告げられたという。A子さんが明かす。