上司が語った“調査終了”のワケ「会長が…」
「一切事情を聴かれることなく、委員会の調査が終わってしまいました。その理由として、上司から言われたのは『会長が(A子さんの)体調を心配して、負担を軽くするためにも早く終わらせるよう指示をしたから』と。結局同月27日に懲罰委員会が開かれ、結果、ハラスメントは認められませんでした。
理由は私以外の参加者に聞き取りをしたところ、『その場を誰も見ていないし、楽しく飲んでいる様子だったから』というものでした。
コンプライアンス委員会はX氏を含む業務執行役員など数名で構成されており、当日の関係者も含まれます。もちろん今回はX氏が当事者なのでメンバーから外れましたが、そもそも役員たちとの飲み会で起きた事案を委員会がまともに調査できるのか不信感しかありませんでした」
聞き取りさえされずに訴えが「事実ではない」と判断されたというのだ。A子さんはこの対応に大きなショックを受けた。
「会社に信じてもらえなかった」心がぐちゃぐちゃに
クラシアンの役員や幹部は、現場あがりは少なく、リクルート出身のX氏のように別会社からの中途採用がほとんどだという。A子さんは続ける。
「実は後から人づてに聞いた話ですが、リクルート三兄弟の1人が、ガールズバーの店員から『X氏と女性がキスしてるけど、大丈夫ですか?』と聞かれたことをコンプライアンス委員会で証言したようなんです。結局、そういう情報があったにも関わらず、うやむやにされて調査が終わってしまいました。
調査結果を聞いて、もう会社を辞めるしかないと思いました。ハラスメントの立証が難しいのは分かっていましたが、『会社に信じてもらえなかった』『だめだったんだ』という残念な気持ちになり、心がぐちゃぐちゃになりました」
セクハラとは別に、X氏はこの忘年会で会社貸与のパソコンを紛失し、賞罰委員会にかけられてもいるという。A子さんは次のように話す。
「泥酔してパソコンを紛失するほどのX氏には聞き取りをしておいて、被害を訴えた私にはしなかったわけです。一体何のためのコンプライアンス委員会なのでしょうか。
それに、パソコン紛失事案について社員への通達文書にはX氏が泥酔していたことは一切触れられていませんでした。会社として再発防止に努めると書いてあるのに、紛失の原因に言及していないことにも不信感を抱きました」
A子さんは忘年会の約1週間後に、原因不明の胃の痛みなどが続く機能性ディスペプシアとうつ状態である診断され、現在は退職している。
そして、A子さんがセクハラ被害に遭ったのと同時期。別の部署で働いていたB子さんも、上司によるセクハラを受けていたという。
「上司から『お前って胸大きいよね』などと、身体的な特徴をからかうような発言を何度もされました。しかも身体を使ってうまく仕事をしている、といったことまで……」
B子さんが絶望したのは、上司による日常的なセクハラと、クラシアンのあまりに不誠実な対応だった――。
#2を読む